去年の五月から、家を建てようと探しはじめ、ようやく土地が見つかり、設計の概要が決まり、書類上は着工と相成った。
実質的な着工は明日だが、今日は日取りが良いということで、地鎮祭――の真似事をした。 なるべくやりたかったが、どうしてもやりたかったわけではないので、諸般の事情により、神主さんに祝詞をあげて貰うには及ばない、ということにした。 その分で、ソファを少しだけいいのが買える。
依頼した工務店が特にそうなのが、建築業界みんながそういう傾向なのか、験を担ぐようで、何社かに見積もりを依頼し、競合して貰い、その中から一社を選び、契約しようと決めたそのときにも、翌日でもいいと言ったのだが、
「いや、明日はよしましょう。どうせなら大安に契約しましょう」
六曜の暦つきのカレンダーを開いてみる。
「明日も別に悪い日じゃないでしょう?わたしたちは気にしませんが」
「いや、折角ですし。えーと、大安でも、よくない日があるんですよ。会社に問い合わせますねー」
で、契約日も、書類上の着工日も、大安吉日を記入し、実際の着工日も大安、そして、今日も大安、ということで、土地のお清め。 日本酒と、塩と、米を撒き、工事の安全と、家運隆盛を願う。
その後、御近所に粗品持って、御挨拶。 周囲も真新しい家ばかりだが、いろんな人が住んでいる。
「すぐそこの空き地に家を建てます。建築中は御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
という挨拶をしに行った初対面の日に、
「お子さんは?」
という質問をする人がいたのは驚いた。
「まだです」
と言ったら、
「あらー、まだ新婚さんなのかしらー」
なんでそんなにも詮索するんだ?
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