駅前の道路に、女性用の腕時計が落ちていた。 ベルト部分がブレスレッドのようになっていて、そのブレスレッドにはシルバーのリングがついている。 周囲を見回しても、落とし主はいないようだった。 拾い上げて見ると、グッチ社製らしい。 時計にもブランドにも興味は薄いので、真贋など判るはずもないが、製造番号らしきものもある。 それに、一緒についてた指輪は安物にしか見えないが、どんな値段のものであろうと、こと女性にとっては、指輪やアクセサリーは特別なものである場合もある。 前述の如く、別に時計にもブランドにも興味は無いので、人が使っていたものを使いたいとも思わないし、謝礼も、定価の一割としたって、たいした額ではなかろう。 が、とりあえず、捜してる人がいるかもしれないので、近くの交番に届けた。
「高価なもののようですから、持ち主が出てくるかもしれないですね」
と、婦人警官に言われた。
さっき検索かけてみたら、本物なら時計の定価は6万強、安く買ったら3万前後らしい。 指輪にも時計にも、思い入れがなければ、警察に届けるかどうかは微妙な値段である。 落とし主が現れず、わたしのものになったら、忙しければ権利放棄、そうでなければ、持ち主の思い入れが無いものとして、遠慮無く、リサイクルショップに二束三文で売るだろう。
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