2003年11月09日(日) |
ないないの神様と値切の鬼 |
数日前、自転車の鍵を失くした。 勿論、自転車の鍵には、スペアがある。 それを、ふたつとも失くしたのである。 買ったばかりである。
延々、ランディに阿呆か馬鹿かと罵られつつ、新しい鍵をつけようとしたら、前輪用のと違って、後輪をリング状の鍵で留めるやつは、簡単には壊れない。 近くのスーパーの自転車売場で、外し方を尋ねたら、 「持ってきていただければ外しますが、防犯上、外し方はお教え出来ません」 と言われた。 考えてみれば尤もだ。 鍵の外れない自転車を引きずって行くのは辛いので、100円ショップで、とある工具を買い、ランディに鍵を外して貰った。 非常に苦労して、なんとか無事に壊したのだが……それを、地面に置いたとき、ランディが言った。
「おい。失くした鍵ってこれじゃねーのかよ」
…………何故だ。 何故、今、見つかるのだ。 しかも、陽も落ちかけた時間に。 何日も何日も、家の中も、自転車置場も、必死で捜したのに見つからなかったものが、諦めて鍵を壊した瞬間に、何故それが出て来るのだ。 関西人だからといって、こんな出来すぎたオチは望んでいない。
「ないないの神様」と唱えると、失せ物を、今まで散々捜した場所に、そっと返してくれる神様の実在を感じた。(C新井理恵「×―ペケ―」)
まあいい、今度はナンバーロック式である。 鍵を失くす心配は無い。 番号を忘れる心配はあるが……そのときは、またランディに罵られよう。
その後、ランディがかねがね欲しがっていたノートパソコンを買いに行った。 うちの近所でもそこそこ安かったのだが、比較したかったので、別の大型家電店に出掛けた。 見に行って正解。 やはり安い。 そして、値札の上に「更に値引き致します」の文字。 店員を呼んで値段を尋ねる。 その上に、
「スキャナとプリンタも買うからもう少し引いて」
と言ってみた。
「えー…お幾らくらい……」
「面倒やから、○○万ぴったりに」
「それはー…パソコンもプリンタも、既に目一杯値引きしておりますので……」
「それやったら、端数切ったって」
こういうときは、何故か思い切り関西弁である。
「端数……と、いいますと……」
「4桁」
つまり、7000円ちょっとである。
「……少々、お待ち下さいませ」
店員は、レジの方まで戻って行って、随分長い間、だれかと電話で話している。 ランディは、「おまえ、そりゃ無理だって」と囁いた。
「いや、上司だか責任者だかと話してるってことは、脈はある」
店員は、戻ってきて、電卓を見せた。 最終値引は4000円強。
「はい。それで結構です」
会計を済ませ、帰りがけ、ランディは言った。
「おまえ、鬼だ」
「なにを言う。何百何十円まで値切ったり、『じゃあ要らない』とか言わないだけやさしいだろう」
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