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書くほどのこともない日常
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2003年10月29日(水) 上司はなんでも知っている

ランディを見送ってすぐ、今日は生ゴミの日だと気づいた。
そして、その瞬間、ゴミ収集車がテーマ曲を流しながらやってきた。

やばっ!

ゴミ袋引っ掴んで、ゴミ捨て場に走り、なんとかギリギリで間に合った。
そこまでは良かった。

五階までの階段を昇って、玄関のドアの鍵を開け(以前、不審者が侵入するという事件があったせいで、わたしの住む集合住宅では不在のときは勿論、在宅のときでさえ施錠を徹底するようにと回覧が来ているので、ゴミ捨ての間であろうとも鍵はかけるようにしている)、中に入ろうとしたら……ドアが動かない。

あー…前から、このドア固かったんだよなぁ。

しかし、今回は、本当に、びくともしない。
自分でなんとかできないものかと、近所のスーパーや100均ショップで工具やロープを購入するも、事態は好転せず、気がつけば正午。
朝の9時頃から格闘したが、どうしようもない。

こりゃ、ランディが帰るまで、どうにかどっかで時間潰すか。

……が、こんな日に限って、ランディの奴、携帯を自宅に忘れていた。
仕方無く、職場に電話。

昼休みの時間だと思って電話してみたらば、なんと夏の停電危機のときのままのシフトで、まだ仕事時間で、出たのはランディの上司。
うわわわわ。
やばっ。

「お世話になっております。ランディの家内でございます。恐れ入ります、主人と代わっていただけますでしょうか」

と、丁寧にお願いし、代わってもらう。

で、ランディに事情を話す。
あなたが帰る時間までに、なんとかしておくつもりだが、だめな場合は、時間潰しにダイエーの優勝記念セールに行った後、近くのファミレスにいるから、会社になにか工具があったら借りて来てくれ、と、言ったら、ランディの後ろから、上司の声が。

「おまえの住んでるところの近くに、建具屋があるから其処に行け。修理代金は、後で管理会社に請求出来るだろ」

おお、そう言えば、そんなんもあった。
ランディに、上司に代わりにお礼を言ってくれと頼み、電話を切り、早速その建具屋の電話番号を調べて電話したら、一時間で来てくれると言うので、それまでの間、何故か阪神ありがとうセールをやっているイトーヨーカドーで買い物をした。

帰ってみると、建具屋の車停まっているあたりに、ランディもいた。

どうしたのだ、気分でも悪くなったのか、と尋ねたら、

「上司が、奥さんが心細いだろうから帰ってもいいって」

「はぁ?」

此処暫く、ランディは体調を崩していたが、仕事が立て込んでいて、休めなかったのである。
調子悪いので、明日休みたい、と言っても「すまんが、忙しいんだ。なんとか頼む」と言われて、ユンケル飲みながら仕事をしていたのである。
これが、小さな子供が家に閉じ込められていたり、或いは家に入れないわたしが小さな子供だったり、もしくは、時間帯が夜なら、仕事中に帰らせるというのも判らないことも無いのだが……

ドアはどうやら、老朽化が激しく、蝶番(修理に来てくれた人は、「ちょうばん」と発音していた。違和感)が曲がっているのと、ドアの枠(と、いうのだろうか?)が歪んでいるせいで開かなかったらしい。
電動ドリルで枠を切り、その部分にコンクリを塗ることになった。

それを見ながら、ランディが、

「おまえ、上司に、家に入れねぇって言ったの?」

「言わないよ」

「あれ?じゃあ、なんで、建具屋教えてくれたりしたんだろ?」

「貴様、天然か?電話したときに、『なに、家に入れねぇ?鍵じゃなくて、ドアが固いのかよ。で、おまえ何処からかけてんだ。コンビニ?』と、わざわざこっちの言葉を復唱してたじゃないか」

「……そうだっけ?」

「そうだよ。とにかく、戻ったら、上司に御礼とお詫びをしておいてくれ」

この大ボケで、こいつは、絶対に隠しごとは出来ないタイプだと改めて判った。


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