絶対に守られることの無い言葉がある。
「今日、先輩と飲んで来ていい?」というランディへのお願い。
「早く帰って来てね」 「遅くなるときは電話してね」 「だれも連れて来ないでね」
ちなみに「早く」とは、「終電までに」で、「遅くなるとき」とは、「終電に乗れなかったとき」である。 総てに対して、ランディは、「うん」と言うのだが、守ってくれたことは本当に稀である。 下手すると三つとも忘れられてしまう。
昨晩も、遅く帰って来て電話無し。 辛うじて、一緒に飲んでいた先輩を泊めるとは言い出さなかったが、連絡も無く帰ってきたのは二時半。
「ただいまー」
というのを無視していたが、しつこく何度も「ただいまー」を繰り返すので振り返ると
猫耳カチューシャ
をつけて立っていた。
「…………」
面白い?面白いだろ?可愛いだろ?笑え。今すぐ笑え、と言いたげな顔で立っているランディに、真顔で
「で?」
と言ったら、非常に不満そうだった。
「二時間前に帰ってたら爆笑してやっても良かったが」
「ちっ。折角貰って来たのに」とか、ぶつぶつ言っていたが、何処のだれに貰ったかは置いといて、一体何処からそれをつけて歩いていたかが気に懸かる。
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