2003年08月22日(金) |
むしろ聞かせてくれと言っているのだが。 |
掃除をしようとしたのだが、掃除機をかける以前に、部屋の中を見て呆然としていたのである。 どうしたら、こんなに散らかるのだろう。 いや、そんなこと考えてる間に、散らかったものを、収めるべき場所に収めればいいのだろうが、途方に暮れてしまうのである。
そんなときに、電話のベルが鳴った。
「奥様でいらっしゃいますか?」
この出だしは、ほぼ100%セールスである。 うちの番号は、電話帳に載せていないので、名前で確認できないのである。 大体、マイナーなエステか化粧品か浄水器の類に決まっている。
「わたくし、○○化粧品と申しまして、新製品の御案内でお電話させていただいております」
「……」
「あの、奥様でいらっしゃいますよね?」
「そうですが?なにか?」
いつもなら、「全く興味ありません」と言って切るのだが、何故か相手になってしまった。 無意識に、掃除から逃避したかったらしい。
「奥様、基礎化粧品は、いずれのメーカーをお使いでしょうか?」
「使ってません」
「あの、使ってらっしゃらない?化粧水も、乳液も?」
「はい。全く」
「では、お手入れはなさってらっしゃらないのでしょうか?」
「お手入れとはなにを指すのでしょうか?」
「は?」
「高価な洗顔料や化粧水を使うことだけが、お手入れの総てでしょうか?わたしは、石鹸でまめに洗顔し、清潔であることを心がけておりますが」
「あの、わたくしどもの基礎化粧品は、保存料とか、鉱物性の油とか、身体に悪いものを排除して……」
「保存料を使っていない?」
「はい。左様でございます」
「パラベンとか、環境に良くない界面活性剤とかを使ってないんですか」
「はい。総て植物性で出来ておりまして」
相手が意気込んできたのが判る。
「ほー。で、保存料無しで、どうやって保存するんですか」
「いえ、だから、植物性で、とてもお肌にやさしくて……」
「植物と言っても、いろいろありますねぇ。漆や、トリカブトなんかも植物ですが」
「…………」
「植物がお肌に良いという根拠は?」
「聞くのが嫌なら、聞いて戴かなくて結構です!失礼いたします!」
セールス電話で、向こうから切られたのははじめてだった。
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