遠い処を遥々来たのだから、もっとゆっくりして行け、と何度も言ったのだが、帰り道に、伊豆の温泉にでも寄るから、というので、両親と弟を見送った。 一緒にどうだ、と言われたが、旅館までは父の車に同乗して行けても、帰りは電車でひとりである。 ひとりで自宅まで帰り着く自信が無い。 ああ。わたしは方向音痴だとも。
昨晩アホほど作ったおでんをボックス型のジップロックに詰めて、おにぎり、ペットボトルのお茶と共に弁当代わりに母に渡す。
「もし、何処かで渋滞に巻き込まれたら、ご飯どころじゃないだろうから」
とは言ったが、三日三晩のおでん地獄が嫌だった、というのも、多少、ある。
「また近いうちに」と、遠ざかる車に手を振った。
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