最近、バナーの加工なんかをすることが多い。 きっかけは、出来たばかりのアリアのサイトにバナーが無かったので、適当に奴のサイトの画像をいじってリンクバナーを作ってプレゼントしたことだったのだが、これが間違いだった。 アリアにバナーをプレゼント出来たのは、友人の気安さと、元になる画像があったからだった。 が、それから間もなく、アリアからメールが来た。
「あなたを見込んでお願いがありますの。わたくし、少し前から通っているサイトがあって、わたくしのサイトからリンクしたいのだけど、そこにリンクバナーがありませんの。申し訳ないけれど、どんなデザインでもよろしいわ。サイト名の入ったバナーを作って差し上げてくださいませんこと?」
どんなデザインでもいい、というから、本当に適当なデザインのバナーを作って送ったら、
「流石ですわ。これでも結構だとは思うのですけれど……でもね、少しイメージが違うような気がしません?」
と、リテイクを出してくれた。 ……「どんなデザインでもいい」というのは……。 いやいや。 長いつきあいの奴のことだ。 わたしの技術の向上のためだったんだろう。 判っている。 そんなことを、字書きのわたしが望むか望まないかは別として。 いいんだ。そんなことは些細なことだ。 結局、わたしは、アリアのサイト含めて六つほどバナーを作ったり加工したりしたお陰で、随分と、お絵かきソフトの使い方を学んだから。 いろいろやってるうちに、気をよくして、壁紙を試作して見せたら、アリアは、わざわざ即効で電話をかけてきてくれた。
「ほーーーーっほほほほほほほほほほほほ!ラヴァージが!ラッヴァーーーーーージが!あれでは深海を漂うクラゲですわ!おーーーーっほほほほほほほほほ!!」
と、いう感想を伝えるために…… 乗せておだててケツを叩いてやる気にさせて、最後に身の程を思い知らせてくれる旧友という存在は、実に得がたいと思っている。 いや、マジに。
そんなアリアに、またわたしはよせばいいのに、質問をしてしまった。
「なぁ。またひとつ訊いてもいいか?」
「よくってよ」
「あなた、もう随分下着歴長いんだよな?」
「諸先輩方には敵うものではありませんけれど、そこそこは」
「あなたが買う下着は高級なだけあって、見た目が綺麗で、機能的にも優れていて、ハードな使用にも耐えるんだろうけど、そんなに長い間マニアやってるなら、当然、どんなに大事に着たって、だめになるものはなるだろう?汚れたり、レースがほつれたり、ゴムが伸びたり……」
「ええ。残念ですけれど、身につけるものですもの。どんなに素晴らしい芸術品のような下着でも、本来の目的通りに使用する限り、汚れるのは避けられませんわね。ああ、わたくしたちは罪深い女。消耗品に恋をしてしまうなんて……」
「で、そういう、へたって着られなくなった下着は、どう処分しているのだ?」
受話器越しに、深いためいきが聞こえた。
「……問題はそれなんですの……」
「まあ、下着に異常なまでの愛を注ぐあなたなら、愛着のある下着を捨てるのは辛いだろうな」
「ええ……この間、手持ちの下着を整理していましたの。そうしたら、着られなくなった下着が衣装ケースにふたつ分……結婚するときには、断腸の思いで、サイズの合わない新品や、着られなくなってしまった分を含めてかなりの数の下着を処分したのですけれど、いつの間にか、また溜まってしまって……」
此処までは、驚かなかった。
「一体、どの服を処分して収納スペースを確保しようかと思案しているところですの」
「待て」
「はい?」
「それは、着られなくなった下着なんだろう?」
「ええ」
「なのに、それを捨てられないからって、着られる洋服を捨てると言うのか?」
「仕方ありませんわ」
「……何故捨てられないんだ?そりゃ、惜しいだろうが、もう着られないんだろう?切り刻んだ上に、紙袋にでも入れて、燃えるゴミの日に出せばいいだろう」
「わたくし、洋服は思い切ることが出来ます。でも、下着は思い切れませんの」
「……でも、着られないんだろう?」
「着られませんわ」
「なら捨てればいいじゃないか」
「だって、二度と手に入らないものなんですのよ」
「でも着られないだろう?」
「着られませんわ」
「捨てろ」
「また着たくなったら困るじゃありませんの」
「だから、それは、下着に並々ならぬ執着があるあなたが『もう着られない』と判断したものなんだろう?」
「あああああ!あれも、あれも、あれも、思い入れがありすぎて、捨てられませんの!!でも……きっと、素晴らしい下着を見たら、買わずにはいられませんわ!これからも増えることはあっても減ることはないでしょうし!」
「……………………」
「どうしたらいいとお思いになる?」
…………だから、捨てろってば。
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