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書くほどのこともない日常
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2001年10月26日(金) やっぱり大人になれない自分

昨日の日記で、自分が、少し大人になった気がする、というようなことを書いたが、やはり妙なところでわたしは子供であるらしい。


例の天然娘は、今日も絶好調だった。

「あのー、ずっと知りたかったことがあるんですけど、訊いていいですか?」

どうぞ、と言うと、

「関西人にも、暗い人っているんですか?」


わたしは、敬語は標準語で喋ることができるが、くだけた標準語は使えないので、普段は、関東人に判る程度の関西弁を使っている。
わたしは、どちらかというと、人見知りする方なのだが、こういう質問が出るところをみると、彼女は、わたしを明るいと思ってくれているらしい。

「……そら、暗い奴もいてるよ」

此処で、『わたしみたいにね』と付け加えたら、彼女の中にあるだろう、関西人=お笑い芸人という印象が強まるだけなので、ぐっと堪える。

「いくら関西人だって、それぞれ個性はあるでしょう」

と、仕事しながら聞いていた男性が激しく突っ込み、旅行好きの女性も大笑いしている。

「えー、だって、わたし、暗い関西人見たことないー」

陰気な関西人もいるし、洒落の通じない関西人もいるし、納豆好きの関西人も多い。
きっと、いつも憂鬱なイタリア人もいるし、リズム感のない黒人もいると思うよ、ということで、その話題は終わった。

そして、「幽霊って信じますか?」と、いう、昨日の話のつづきになった。
わたしが、いくつか、自分の体験を話した後に、「でも、基本的には、信じてない」

と言ったら、

「なんでですか?体験してるじゃないですか。絶対いますよ。いなきゃおかしいもん」

と、必死になっている。

「金縛りは、身体が寝てて、頭が起きてる状態らしいし、人間って、幻覚も割と簡単に見るらしいし」

奇妙なことに、霊体験したことのあるわたしが信じてない、霊感皆無と自認する彼女が信じてる、と主張しあうことになってしまった。

「霊が存在しないっていうなら、だれもいない廃墟に、夜ひとりで行けます?」

「信じてるのと、怖いのは別でしょ」

「別じゃないですよ。いないものを怖がるなんておかしい!いないっていうなら、いないものを怖がらないでくださいよー。いるんですってばー」

「だれもいない夜道は、だれでも怖い。でも、そこに痴漢や強盗がいるとは限らない。いない可能性の方が高い。でも、たとえ、そこにだれもいなくても『いるかも』と思うだけで怖いでしょう」

それでも「ほら、『いるかも』と思ってるじゃないですか」と、納得しないので、心霊と超能力が死ぬほど嫌いらしい、上岡龍太郎氏の言葉だが、と、断って、それを請け売り。

「じゃあ、日本の球場で、アメリカ人選手は何故ホームランが打てるんだと思う?」

「?」

「アメリカの空襲のせいで死んで行った人たちが日本中に大勢いるよね。死者の魂が存在するなら、アメリカ人が、日本に入ってくること自体許せないだろうし、ましてや、アメリカ人選手が、日本人投手と対決して、ホームラン打つなんて許せないんじゃない?」

「……………………………………………………」

非常に長い沈黙の後、彼女は言った。



「それは、全員、成仏してるんです!」




全員、大爆笑。

その後、「そういえば、縄文人とか弥生人の幽霊って聞かないよね」とか、「原始人の幽霊がいるとしたら、なにを恨んで出て来るんだろうね」とかいう笑い話になった。


うーん。いかん。
わたしは、いろいろな人が、いろいろな考え方を持っている、ということを理解するのが大人というものであると思っている。
だから、「霊は存在してもしなくてもいい」という姿勢でいようとしてるのに、ついむきになってしまった。
彼女が「いないと思うなら何故怖がるのか」という言葉も尤もであり、実際見たときにはビビりまくったにも関わらず、大人げないことをしてしまった。
本音のところは、「こんな年下の子に、口で言い負かされるわけにはいかない」であったことを否定できない。

ああ、精進が足りない。


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