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2001年10月12日(金) いつか必ずやってくる日をシミュレイションしてみた

どんなきっかけだったか忘れたが、ランディと、このまま一緒に暮らしていけば、いつか、どちらかが先に死ぬときが来る、という話になった。
このまま、人間の家族が増えることがなければ、ふたりのうち、残された方が喪主であろう。

「俺やだよー。喪主の挨拶とかできないもん」

「立派なこと言わなくていいと思うよ。長い挨拶が出来ないなら、泣き崩れながら『ありがとうございました。故人も喜んでいると思います』でいいと思うよ」

「やだなー。『式』のつくような畏まったこと嫌いだもん」

「わたしだってやだよ。まあ、最近はお葬式も自宅じゃなくて葬祭ホール借りることが多いから、昔ほどは大変じゃないと思うけど……でも、あなたは断ったり、値切ったりするのが苦手だからねぇ」

「あ、だめだ。絶対に葬儀屋の言いなりになって、物凄い金額になる」

「わたしら、披露宴も周りに任せっぱなしで暢気だったもんねぇ。葬式も喪主ってのは名ばかりで、実質親に仕切ってもらうことになるかも」

妙に具体的な話になってきて、気づく。
順当に行けば、わたしたちが死ぬ頃には、親はいない。
全部お任せで、みなさまのよろしいように、というわけにはきっと行かないだろう。
「やだ」とは言えないことになっているのだ。
そして、お互いのうちどちらかが死ぬ頃までには、幾つもの死に出逢い、やるべきことを学ぶことになっているらしい。
しかし、それでも、相手の葬式を出す煩わしさを考えると、お互いに、自分が先に死にたいと思っている。

やっぱ、先に死んだもの勝ちだな。うん。などと思ったが……
試しに、自分の葬式を想像してみる。

疲労と悲しみと緊張と多忙のために呆然とするランディ。
通夜振る舞いの酒を、参列者にすすめるついでに返杯を受けまくり、自分が一番酔っぱらって、管巻いて、棺の中で横たわるわたしの顔を覗き込んで、

「おらー。おまえも飲めよー!おめーのためにみんな集まってくれてんだからよー。なにー?ビールは飲めねー?ったくよー、贅沢なんだから。おーい、だれか、コンビニでサ○トリーのカクテルバー買ってきてー」

とか無茶を言うランディの姿(生え際後退or少々白髪混じり)が頭に浮かんだ。
だめだ。
そんなことになったら、左前の死装束姿で、起き上がって奴の頭をひっぱたかなきゃならんではないか。

……やっぱりわたしは先には死ねないことになっているらしい。


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