ことばのかけら
桜子



 美しいままでいたかった

残り火は今にも消えそうだけれど
儚い美しさが残っていました
風が吹いて 時にそれが火花を散らし
胸を痛めることがあろうとも
その度 美しく燃えた頃の鮮やかな炎が
懐かしく より美しく心に残るようでした

けれど
残り火の片割れを持ち合わせた貴方が
消えかけの燃え残りに火を点けたがりました
私は気付かない振りをして
ふっと息を吹きかけました
…僅かでも燃えていた火は 灰となっていきました

それでもいっそ
灰のままでいられたなら
風に飛ばせば 空へと舞い上がれた 自由がありました
それはそれで美しかったかも知れません

燃える筈のない灰に
またも火を点そうとする無茶な貴方がいました
仕方なく 私は
灰に水を掛けるしかなくなりました

すべてを醜く変えてしまった
二人の間には
もはや何も 燃やせるものはないでしょう

…少なくとも 私のほうには


2003年01月14日(火)
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