猫になりたい。
どこといって取り立てて特徴のない普通の日本猫になりたい。
猫になれたらまず顔を洗いたい。 肉球に唾液をたっぷりつけて 耳の後ろから しゃーしゃーと洗いたい。
猫になれたら子猫を生んで パンパンに張ったおちちにむしゃぶりつく子猫たちを ぶらんとぶら下げながら 歩きたい。
猫になれたら 毛玉を吐こう。 嫌なことは全部毛玉に絡めて 一日一回吐いてやろう。 だから 毎日幸せな猫になる。
猫になれたら あなたの布団にもぐりこもう。 わたしのキスは、このピンクの舌が痛くすぐったいから嫌われる。
だから じーっとお布団を暖めて あなたと一緒に布団内温度を高める。 そして起きたてのあなたにキスをひとつしてもらう。
猫になれたら あなたに首の後ろをつままれるのも楽しもう。 猫になれたら あなたになでられて喉をならそう。 猫になれたら あなたの脇の下にもぐりこんで シエスタしよう。
高いところから飛んだら「ふぎゃ」と言って落ちるけど。 舌では上手に水が飲めないけれど。 だから喉が渇いたら 蛇口を開けてもらおう。 そこから ごくごくお水を飲もう。 で、あごからポタポタ水滴を垂らす。 それをあなたが 指ですくってくれる。
わたしが猫なら きっとずっと愛してくれる。
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