移動日。 リオ・デ・ジャネイロ ― サンパウロ
ジャカランダ。ホテル周辺にて。

覚書(辺見庸 著 独航記 死と再生の世界を活写 より)
現代とは、醒めて正視するならば、まことにやっかいな時代である。たとえていうなら、それは、進歩が退歩を意味し、逆に、退歩こそ進歩でもありうるような迷宮に似ている。あるいは、合理が不合理に見え、その逆にも見える幻の大伽藍にも似ている。この迷宮、伽藍では、当方の豊かさが彼方の貧困を意味し、こちらの飽食があちらの飢餓を導き、平均寿命の高まりが自殺・事故死率と並行するだけでない。すぐれた頭痛薬や精神安定剤の発明と大量生産が、なんのことはない、おびただしい頭痛症候群と精神の不安定を前提としているような、悲しいアポリアに満ち満ちているといっていい。
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