YUCHIKOの音楽とおでかけキロク★
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2008年01月29日(火) <映画感想>夕凪の街 桜の国

広島の原爆を扱った漫画としてはかなり異色のアプローチで被爆者の悲劇を描き、今まで原爆ものをたくさん読んだり見たことがある人にも衝撃を与えた、こうの史代さんの原作を映画化した作品です。

決して悲惨で凄惨で壮絶なシーンというのはでてこないのに、こういう訴え方をする反核漫画もあるのか!とショックすら受けた作品。
原作は賞を総なめにしています。

その原作の雰囲気を忠実に忠実に再現しようと、丁寧に作ってあると思います。
キャストもいいです。
特に主役の麻生久美子さんは雰囲気も原作に合ってるし、なにより作中で歌う歌声の美しいことにビックリ!!透き通ってて本当にきれいなんです(^.^)

ただ。
原作は「夕凪の街」「桜の国」という2部連作になっており、映画はそれを一つの作品の2部構成にした…という作りが原作を読んでいない方には少々解りづらかったのでは?と思いました。
原作の2作品も続けて単行本に収録されているのですが雰囲気がガラッと変わるので私自身読み始めにかなりとまどいました。映画にもその違和感がちょっと出てしまった感じがします。
「夕凪の街」と「桜の国」は連動した作品ではあるんだけど、やっぱり違う作品なのでこの作り方はどうかなあ…。しかしまるっきり違う作品として公開するというのもできなかったろうし、ちょっと難しいですね★

さて内容ですが
キャストの配役はなかなか良かったのですが出来としてはちょっと不満も多し。

●「夕凪の街」主人公・皆実が亡くなるシーン、きれいにしすぎ。

原作では原爆投下後数年は元気だった皆実が放射能の影響でだるくて起き上がれなくなり→だんだん寝たきりになり→血を吐いたりしてるうちにとうとう目まで見えなくなり→画面が真っ暗になるとモノローグで物語が語られ始め→つばを飲み込むと、血と一緒に自分の肉片が飲み込まれていく・・・
という、放射能被爆のじわじわとした恐ろしさがあったのですが
彼氏と弟に見守られながら木の下で寝たまま亡くなる…なんて、美しくしすぎ。
せっかくの原作の怖さを生かしてない。イカンです(=_=)

●「桜の国」「夕凪の街」の時代から数十年経って、亡くなった皆実の姪が主人公のお話。
父(皆実の弟)が家族に内緒で広島に何度も行っているのを不審に思った主人公(田中麗奈)がこっそり父の後をつけると、姉の知り合いだった人たちをたずねて回っていたことが判明。
父にそんなお姉さんがいたことを知らなかった主人公は、被爆2世で若くして亡くなった自分の母への父の思い・伯母皆実への思い・そして自分の弟も現在直面している『関係ないことと思っていたが未だに自分の身の周りで続いている原爆の被害』を初めて知り、人として成長してゆく…そんな内容なのですけど
父をこっそりつけていく、というストーリーなだけに全体的に漂うコメディータッチが少々イタイところもあり。
「夕凪の街」からすぐ切り替わってこちらの作品が始まるので、その前の落ち着いた雰囲気からあまりにガラッと変わるところでこちらがなかなか着いていけないのです★
(ちなみにこれは原作にも言える)

田中麗奈ちゃんのお母さんは胎内被曝による白血病で早世してしまうのですが、
麗奈ちゃんがある日学校から帰ると台所でお母さん、大量吐血!!
固まってる娘に血だまりから手を伸ばし、マジな目つきで「お、おかえり…!」なんて
悪いんだけどギャグシーンになってしまうじゃないですか(TxT)
母のそんなシーン見ちゃったら、そらトラウマとして心に焼き付きますよな…。

そんなこんなでどうなの?ってシーンはあるんですが
最後に父(酒井マチャアキ)が麗奈ちゃんに
「お前は亡くなった皆実姉ちゃんによく似てるから、幸せにならなきゃな」
って言われて電車の中で涙を流すシーンはよかった。
めちゃめちゃ胸に迫って、ついボロ泣きしそうになりました(T-T)

60年も昔のことで、とっくに終わっているかのような原爆。
しかしそれは直接でなくても風評被害や差別、遺伝などによっていまだ脈々と傷を残しているのだ…という悲しさを教えてくれる作品です。

ものっすごく良いから超おすすめ!!ってほどではないですが
原作とあわせてぜひ一度は鑑賞していただきたいお話です。
この作品で賞を取った麻生さんを見るだけでも価値があると思いますよ♪♪


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