2004年09月25日(土) |
映画を観てきました〜誰も知らない〜 |
ご存知、柳楽優弥くんがカンヌ主演男優賞を獲得した、話題の映画。
実際の事件を基にした・・・という話だけに、どのような映画になっているのかちょっと想像がつきかねたんですが。 観終わった今も、何と言っていいか、不思議な感覚にとらわれて感想を述べづらい。そんな映画。
観てきてから誰かに「どうだった?!」って聞かれたとしますよね。 そしたら何と答えて良いか、的確な感情が言い当てられない。
「すっごくよかったよー!」(>▽<)でもなく「感動した!」(^.^)でもなく。「泣けたよ!!」でもなければ「よく解らなかった」でもない。
どうすればこの子達にとっては一番良かったんだろうとか どうして周りの人は気づいてあげられなかったんだろうとか 気づいたところで本当に助けてあげられたんだろうかとか せめて一番下の子がああなってしまう前に何とか出来なかったんだろうかとか 母親はこの子達を実質捨てて、本当に心が痛まなかったんだろうかとか 色んな感情はわき上がってはくるんだけれども。
しかしあんな状況でもあの子達は私達の周りで生活していたし、 日々は毎日毎日淡々と流れていってるし、 兄弟の中で悲劇があったとしてもその「出来事」を彼らが「処理」してしまえば、戸籍が無く“存在していない”扱いの彼らのことは、世間的には全く何の問題もなく廻っていってしまうのだという空恐ろしい感じ。 そこに彼らが息づいて、確かに生きて、存在しているのに世間的には 「何もない」も同然→「誰も知らない」存在というもの。 しかも、これが実話だということがなによりこの映画について考えさせられる一因なのでしょう。
映画は、この日々はどこまで続くんだろう?どこで彼らはこの生活を終わらせるんだろう?と不安なまま進みます。 思ったより長い上映時間の間、観ている私達は彼らの今後の生活がどうなってしまうのか?!トドキドキするわけですが・・・。
この映画について、私はハッキリした意見を持てません。 実際の事件では、彼らの生活には「終わり」が来て彼らは保護・親は逮捕・裁判・・・という「結果」が出ているわけですが 何か、そう言う法律のくくりじゃない何かが、この映画には詰まってるような気がしたのです。
良かった点。 必要以上の音楽がなかったこと。 主題テーマ(byゴンチチ)が思い出したように流れるだけで、あとは彼らの生活音だけです。そこが「彼らが生活しているんだ」というリアルを感じさせます。ちなみにサウンドトラックは\1050分しかないみたいです。(少なっ!笑)
キャストはオーディションで選びに選んだというだけあって、どの子も「普通の子供らしさ」がよかったです。あまりに自然で、ホームビデオを観てるかのよう(^.^)じっくり撮影したという、作り手の気持ちが伝わりますね。
特に柳楽くんがしょっちゅう見せる、 「カメラも向けられたときに素人がしてしまう笑いを押し殺したしゃべり」 「素人がついしてしまう笑いしゃべり」 これが本当に印象的でした!彼の実際の成長記録を観ているような、反抗期を迎えようとしている“何とも言えないいらだち”みたいな感情も、本当素のまま画面に出てて。 あの彼のありのままの表情が、映画に得も言われぬ新鮮さを与えていたのは間違いなく、カンヌでも賞を獲らせた要因だったと思います。
カンヌ映画祭でもこの映画を見終わった人達の間には、やはり不思議な感情が観てるみんなを包んだと思うんですね。 そんな彼らが、「この映画に対して、何かしたい」と思ったと思うんです。 だけど「作品賞」とか「監督賞」とかいうのも何となく、安っぽい。 この何とも言えない作品を作っている、大きな空気感は・・・ やはり、柳楽くんのあの表情。 審査委員長のタランティーノ監督もコメントしていたけど、あまりにも彼の目は雄弁に観るものに訴えかけてきていました。そしてその力が最終的に彼がカンヌ史上最年少での主演男優賞を獲得する・・・という快挙をなし得させたのであろうと思います。
ただ、私はこの映画を見る際には皆そのことは忘れてしまって、ただただ「彼らの、ひそやかで、でも確かな毎日」というものに見入ってしまうであろう事を確信します。 そしてラストシーンに残るものは、『誰も知らない』という不思議な事実。
まだの方はぜひ、ご覧ください!
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