メロディの無い詩集 by MeLONSWiNG
INDEX|前の詩へ|次の詩へ
ナイフが胸に刺さったままで生きてゆくのは大変だ |
2003年06月11日(水) |
後味のひどく悪い夢に 魘されて目が覚めた朝 心臓に激痛が走った
ベッドから起き出してみると 胸に結構大きめの ナイフがブッスリと刺さってた
驚いて抜こうとしたけれど 深く刺さって 全然抜けやしない 無理に抜こうとして 手のひらを傷つけた ベッドの上に汚い色の血のシミが ついてしまった
このままじゃ何も出来ない でもとても痛くて動けない 救急車を呼ぼうとしたけれど 誰かが電話線を切っていた
見知らぬ人に囲まれて 迷い込んだこの街 ナイフが胸に刺さったままで 生きてゆくのは結構大変だ
痛みにはずいぶん慣れて 普通に動けるようになったけど 問題は 結構深刻
就職面接 銀行 税務署 市役所 街中 おかしな目で見られてる
通りを歩けば警官に尋問されて レストランには入れてもらえない 気晴らしに旅行しようとしてみても 両脇抱えられ飛行機にも 乗せてもらえやしない
人並みに恋もしたい 素敵な女性に出逢っても 胸を指さし気持ち悪いと みんな逃げていってしまうんだ
理解者なんていやしない 錆びかけた鉄の匂い ナイフが胸に刺さったままで 生きてゆくのは とっても大変だ
また同じ夢を見て 真夜中に目を覚ます 全てが嘘だったらいいのに 確かめるように胸の上に手をやる 刺さったままのナイフが また指を切る また血が流れる
諦めて生きてみるけど たまに激しく疼く度 人混みの中 叫んでしまい 視線を一身に集める
記憶を亡くした筈の もう1人の自分が覗く ナイフが胸に刺さったままで 生きてゆくのはやっぱり大変だ
|