2012年10月20日(土) |
てぃるのぐ建国祭(仮)・その15 |
「会いたかった! 元気にしてたと(元気にしてたの)?」 薄茶色の毛並みに顔をうずめる。ふかふかの毛並みからはお日様のにおいがした。ついで、返事のようにしっぽが左右にゆれる。 「はじめは無理だと思ったんだがな。母さんが里帰りするならこいつを連れて行けってうるさくてな」 ぺろぺろと頬をなめる感触がなつかしい。小さい頃はこうやって起こされてたんだっけ。 「病気にならないか心配したが、大丈夫だったな。さすが俺の見つけた犬!」 しかも今日はいつになく長い。 「イオリ、お父さんはもう――」 「そうか。帰るとよね」 視線を落とすとくうんと小さくうなずいた。 「もっと話したかったな」 二年ぶりに会えたのに、もうお別れだなんて。もうちょっと、ううん、もっと話たかった。 「イオリ、そろそろ――」 「お父さん、何か言った?」 「だがな、仮にも医療機関においていかがなものかと――」 「うちは別にかまわないぞ」 先生の声にわたしは顔を輝かせ、お父さんは肩を力なく落とす。ユウタもじっとお父さんを見上げているような気がする。 一人と一匹で見つめ合って。 「ここにいる間だけだからな」 そう言い残すとお父さんは自分の仕事場へもどっていった。
過去日記
2006年10月20日(金) 「EVER GREEN」10−9UP 2005年10月20日(木) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,78UP 2004年10月20日(水) またまた台風 2003年10月20日(月) 書きたい、描きたい
|