2012年08月03日(金) |
伊織の手紙−海より−(仮)・3 |
「別にかまわないぞ?」 期待はあっさりと裏切られた。 「たまには従業員にちゃんとした休みを与えてもいいだろう」 てっきり難色を示されるかと思ってたのに。むしろそっちを期待してたのに。 「でも先生がここで頑張っているのにわたし一人が――」 「だったらみんなで行けばいいんじゃない?」 しかも余計な横やり――もとい、別の声にさえぎられた。 「藤の湯からはみんなでって言われたんだよね? だったらみんなで行けば問題なし」 「でも急に休んだら皆さんに迷惑がかかるし、先生の治療を必要としている人たちが」 「張り紙でも出しとけば大丈夫だよ。そもそも出かけるのは明日明後日の話じゃないんでしょ?」 「でも」 「イオリは真面目すぎるんだ。本来ならば故郷に帰省させてあげたいところだがそこまでの余裕はなくてね。申し訳ないが海で我慢してくれ」 我慢しなくていいから働かせてください! そう言いたかったけど周りの気遣う視線が痛々しい――もとい、有無を言わせぬ迫力で。でもと言いつのろうとしたわたしにこう提案してきた。 「だったら相棒にも聞いてみたらどうだ?」 「相棒?」 わたしにとってここ、ティル・ナ・ノーグでの相棒はたった一人しかいなくて。でも彼はお世辞にも海と縁が近いとは言い難い。むしろ全速力で反対の方角にいそうな気がする。 「体力の増強もかねて誘ってみたらどうだ?」 「じゃあユータが 今度こそ首を横にふってくれるだろう。ただそれだけを期待して二つ返事でうなずいた。
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