つれづれ日記。
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2012年05月23日(水) 白花(シラハナ)への手紙(仮)101

 右には空の精霊ニーヴ。アガートラム王国で一番初めに生まれた種族。創造主でこの世界の全てを創りしもの――だったと思う。一方で、左にたつのは雄々しい姿をした男性の神像。こちらはというと――
「海の精霊リール」
 口に出すより前に。第三者の声にふりむく。
「死と再生、裁きを司るの妖精。ティル・ナ・ノーグにおける二つの大いなる柱の一つさ」
 そこには
 わたし達が生まれるずっとずっと前から存在していて精霊と呼ばれるもの達の長。ニーヴ様のことは知っていたけど、もう一柱のことは良く知らなかった。
「これがリール様……」
 雄々しい姿を視界に留めていると、男の人が説明してくれた。
 力の象徴である三つ叉の矛(トリアイナ)を携えた雄偉(ゆうい)な体躯に精悍な顔立ちの男性の姿をした精霊。ニーヴ様が創造ならリールが司るのは死と再生。
「と、言われてはいるけれど。見たことはないから実際はどのようなものかはわからない」
 もしかしたら男まさりの女性だったのかもしれないしね。茶目っ気たっぷりに片目をつぶる神父様にこちらが戸惑ってしまう。教会の関係者ってもっと粛々としたものではないんだろうか。さっきのシスターみたいに。
「……リール様は男のひとだと思います」
「珍しいね。ニーヴよりもリールに興味があるのかな?」
 自分でもよくわからない。でも何故だろう。なんだかほんの少し前に、海にまつわる何かを介したような気がする。
「うん。それは?」
 男の人の視線がわたしの左腕に、腕にはめられた腕輪に注がれる。そうだ。
「もらったんです。お守りとして」
 すべり落ちた答えと共に記憶の糸をたぐる。そう。わたしは海を知っている。

 腕輪をさすりながら、この地をおとずれる少し前のことを思い返していた。






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