2012年03月18日(日) |
今宵、魚のみる夢は(仮)・17 |
「雨はやんだようです」 新しいお茶を準備した友人が再び姿を現す。そう言えばそんな話をしていたんだっけ。 「その花は?」 「テティリシア」 彼の言葉に愕然とした。どうして彼が彼女の本当の名前を知っているんだろう。ちゃんと伏せて話したはずなのに。 「先ほどの昔話には続きがあるんです。なくなった王国には一人の少女がいて、敵国の王子と結ばれぬ恋をしていたと」 ちょうど今の時期に咲くんです。彼の言葉が頭の遠くで響く。 「彼女は彼のことを忘れられずに、彼の瞳の色を模した花を庭中に飾っていたそうです。花言葉は『あなたのことを忘れない』」 「は……は」 まさか、そんなオチが待ってるとは思ってもみなかった。てっきり嫌われたとばかり思っていた。まさか覚えていてくれるなんて。
『お願い。人間を嫌いにならないで』
大丈夫だテティス。 オレは人間を嫌いにならない。
どうしてだろう。 どうしてヒトはこんなにも愚かで、こんなにも不器用で。
「うん。……綺麗だ」 青い花を手にとってつぶやく。
どうしてだろう。 ヒトはどうしてこんなに――いとおしいんだろう。
過去日記
2011年03月18日(金) 委員長のゆううつ。STAGE1-6UP 2006年03月18日(土) 漢字バトンです 2004年03月18日(木) 余白うめ。その2
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