2012年03月17日(土) |
今宵、魚のみる夢は(仮)・16 |
(「嘘だな」) 二人きりの部屋で、もう一人の友人がつぶやく。 (「父親に勘当されて呪いを受けた? 海を離れたのはお前自身の意志だろう?」) 「勘当されたのは本当だよ。オレが海にいたら父上の立場が危うかったから」 ただでさえ抗争だらけの時代だったんだ。オレを引き合いにどんな仕打ちをさせるかわかったもんじゃない。 (「考えを改めるまで帰ってくるなと言われたそうだな。それはきっと、父親なりの優しさだろう」) 「そうであってくれることを願いたいね」
オレがケジメをつけます。 だから、オレを勘当してください。
それで放浪の末に幾人もの女をはべらせておくあたり確実に父親の血を引いているなと不本意なことを指摘された。人聞きの悪いことは言わないでほしい。ただでさえ他の人間、特にさっきまでいたフォルトなんかに聞かれたらどんな反応をされるやら先が思いやられる。 (「長年の放浪の末に、想い人の行きたかった場所にたどり着いた気分はどうだ?」) 「……思い人、だったのかな」 (「初恋ではなかったのか」) てっきりそうだと思っていたと、シリヤが初めて意外そうな顔をする。オレ自身よくわからなかった。ただ一つ言えるのは彼女の言葉がなかったら、これほどヒトに執着することもなかったんだろう。
ただ、彼女に笑ってほしかった。それだけだった。
過去日記
2006年03月17日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,97UP 2005年03月17日(木) 少年マンガ 2004年03月17日(水) 余白うめ
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