2012年02月29日(水) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・45 |
「伊織(イオリ)、どかんした(どうしたの)? 深刻そうな顔して」 お母さん、ティル・ナ・ノーグって知ってる? 「知ってるもなにも、お父さんの生まれ故郷じゃない。忘れちゃったの?」 わかってる。でもそれだけしか知らないんだもん。確かわたしを助けてくれた人がそうだったんだよね。 「あなたは体が弱かったからね。大病で大きな診療所までは時間がかかりすぎて。途方にくれていたところを旅のお医者様が助けてくれたの。伊織だって知ってるでしょ」 知ってる。子供のころから何度も聞いてたし。きっとここよりずっとずっと医療が進んでるんだよね。 「そうね。そのおかげで伊織が助かったんだもの。お医者様には感謝してもしたりないわね。お礼を言いたかったんだけど、ばたばたしてる最中に旅立ってしまったの。何か手がかりがあればよかったのに」 ティル・ナ・ノーグに行けば、もっとすごい医術を学ぶことができるのかな。 「気になるの?」 ちょっとだけ。いつか、行ってみたいな。 「いつかでいいの?」 いつかじゃなくてもいいのかな。 「それはあなた次第ね。伊織、あなたはどうしたい?」 わたしはーー
過去日記
2004年02月29日(日) 一部と二部について
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