つれづれ日記。
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2010年07月10日(土) 委員長のゆううつ。その2−40

「なんであたし、ここでこんなことしてるんだろ」
 広い湿地帯に一人と一匹。あたしは目の前の獣と対峙しながらひとりつぶやいていた。
「大体、あたしに落ち度はないはずよね。もともと来たくて来たわけじゃないんだし」
 肉球がやわらかい。ぷにぷに。
 狼って明らかに肉食系動物だから、もっと獰猛というか荒々しいイメージがあった。少なくともこんなに肉球が柔らかいとは知らなかった。この世界だけでなのかしら。
「一介の女子高生が見ず知らずの場所で見ず知らずの怪物と戦って生きのこれって一体どこの冒険活劇よ」
 ぷにぷに。
「泣き言の一つや二つ言っても罰はたたらないだろう。
 ぷにぷにぷに。
「怒らないのね」
 猫だったらしびれをきらして猫パンチが飛んできそうなのに。目の前の動物はただただおとなしくあたしのされるがままになっている。まあ猫じゃなくて犬でもなく、狼だけど。
「あたしが悪かったのかな」
 先輩に指摘されたことを反芻する。見た目にだまされちゃいけないってことは悔しいくらいよくわかった。優しくないこともしっかりわかったけど。
『優しくしてほしかったの?』
 本音は優しくしてほしかった。物語の王子様みたいに手をさしのべてほしかったわけじゃない。でも『大丈夫?』の一言くらいは欲しかった。
 あたしが悪かったかどうかはわからない。というよりも、悪いなんて思いたくない。だからといって、このまま落ち込んでるだけじゃ嫌だ。
 狼から手を離して両手で自分の頬を軽くたたく。
「行こう」
 修学旅行はまだ、終わらない。






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香澄かざな 




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