目の前に広げられたものを改めてチェックする。 露店らしくアクセサリーがほとんど。もしくは腕時計、絵はがきもろもろ。 やかんや箸までおいてある。おっさん。もしかして夜逃げじゃないんだろうな。 くださいと言った以上、何か買わないと帰れないだろう。だからと言って無駄な買い物は一切したくない。 左から右を隅々見て。財布の中身と家の経済状況もろもろを考慮した結果、ひとつの結論に達する。 「これください」 敷物から取り上げたものを見ると、おっさんは不思議そうな顔をした。 「こんなもんでいいのかい?」 無理もない。学生の男が欲しがるには滑稽なものだろう。だが今の俺にはきわめて必要なものだ。たぶん。 「これでいいです」 それだけ言うと財布から提示してあった金額を取り出す。 「はいはい。確かに」 お金を受け取ると、おっさんは慌ただしく荷つくろいをはじめた。どうやら今日は店じまいらしい。 「いつもここでやってるから。気が向いたらまた来てよ」 曖昧にうなずくと、今度こそ家路につく。 二度とこの道は通るまい。そう心に誓いながら。
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2006年03月09日(木) 3月9日 2005年03月09日(水) 日記とブログ 2004年03月09日(火) 20000です
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