SkyHigh,FlyHigh!
Part,10−7
「いつまでもここに長居するわけにはいかないようですね」 水の精霊が穏やかな笑みを苦笑に変える。 「あなたを心配している人達がいます。早く帰っておあげなさい」 「心配している人……」 それはきっと、二人のことだ。 でもそれは一時のこと。あの二人も、いつか目の前からいなくなってしまうんだ。この世界が夢なのか本当なのかわからないのならなおさら―― 「あなたは何を怖がっているのです?」 「!」 考えていることを指摘され、まりいは体をこわばらせた。 「何事も話さなければ伝わりませんよ。あなたにはそれができるじゃないですか」 「……できる?」 本当にできるだろうか。 変われるのだろうか。 それは、今からでも遅くない? 「元の世界へは必ず帰ることができます。それよりもあなたにはなすべきことがあるでしょう? 大丈夫。あなたにならできます。翼の民の血をひくあなたなら」 そう言うと、精霊はまりいの額に手を当てた。 次第に意識が遠のいていく。 「……あの子を、水の都の姫をお願いします」 うすれゆく意識の中、それが精霊との最後の会話だった。
過去日記
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