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北岳報告・下山





すぐ下に見えている肩の小屋に向けて、とりあえずは下山を開始です。肩の小屋前には、2日ほど前までは確かに「キタダケソウ」が咲いていたという情報があり、散っていなければいいのだけれどと、はらはらしながら、ごつごつの岩道を下っていきます。

たどり着いた肩の小屋では、とにかくザックをおろして空身になって、デジカメ片手に足早なガイドさんの後を追っていくと、その先に……
ありました、まだ咲いていてくれましたよ「キタダケソウ

北岳登頂を果たした私たちへのご褒美のようなその可憐さ。風に揺られる清楚な美しい姿をいつまでもながめていたかったのですが、急いで写真に収め、すぐさまザックを背負いなおします。

この後は草スベリと呼ばれる急な道を下っていくのですが、しばらくはお花畑の間を進むような道で、とても気持ちが良いのです。ずんずんずんずん下山しながらふと振り向いてみれば、お花畑の向こうに、北岳山頂を見ることができました。自分が立っていた場所を仰ぎ見るのって、わたしにとっては初めての経験。達成感となんともいえない寂しさが入り混じった、複雑な心境。

急な道に難儀しながらも、見下ろす雪渓から流れてくる冷たい風を感じたり、木漏れ日をうけたりしながら黙々と下るのは、私は結構楽しかったような。

そのうちに、遠くに白根御池が姿を見せ始めました。見えてから先がまた長いのですが、とりあえず目標があると、降りている心の支えにはなってくれます。

そしてやっと、白根御池に到着。
まずは水場で冷たい水に手を浸し、顔を洗います。預かって頂いていた荷物を受け取って、あたり一面にザックの中身をぶちまけ、最初からパッキングしなおしていると、バットレス帰りの男性に、それじゃあ荷物多すぎだよと笑われてしまいました。でもその方も、山に登り始めた頃は、心配であれもこれもといっぱい持っていかれていたそうなのです。

不要なものをつめこんで重くなった気がするザックを背に、最後の樹林帯を下ります。草スベリからの下山とは違ってゆっくりゆっくりなペースなのですが、やはり最後の方は相当疲労がたまっていたよう。

頭では大丈夫だと思っていても体の方がついていっていないと言うか、斜面が緩やかになったところで気を抜いたりすると、途端に足がよろめいて、そしてよろめいた拍子に背中の荷物の重みにひっぱられて体勢を立て直しきれなかったり。すぐ向こうが切り立った斜面、というところでそんな状態になってしまった時は、一瞬滑落という文字が頭を掠めました。

それでも、どうにかこうにかPM4:00過ぎ、無事全員下山完了。
ガイドさんが駐車場に車を取りに行ってくださっている間、ほとんどへたり込んでいました。もう、歩くの嫌だ。

ガイドさんが、甲府の道はよくわからないんだけれどおっしゃりつつも、今夜の宿まで送り届けてくださいました。甲府駅から10分となっているのに、着いたところはえらい山の中。坂道をくねくねと車が登っていくのですが、自分の足で登っているわけでもないのに、坂道を登っているという状況そのものが、なんだかプレッシャー。坂道は、しばらくもういいよー。

温泉旅館の入り口に車を横付けしていただき、荷物を降ろします。そのまますたすたと「それじゃあ」と運転席に乗り込もうとされるガイドさんを、あわてて引き止める私。あの、まだガイド代お支払いしてないんですけど。

そこそこの構えの温泉旅館に、山帰りですみませんの泥靴でチェックイン。すぐさま大浴場に直行。汗を流して大きな湯船につかります。

し〜あ〜わ〜せ〜!!!

この後はお食事処でビールで乾杯。ほんとうにほんとうにお疲れ様でした。
今日一日行動食のみしか口にしていなかった私達、旅館のお食事に生き返る思いです。この後、貸しきり露天風呂につかってしばらくのんびりとしたあと、部屋に戻ると速攻でお布団にもぐりこみます。

北岳みやげの強烈な筋肉痛が、次の日から1週間も続く事になろうとはこのとき知る由もなく、この夜ばかりは幸せな眠りをむさぼりました。

2004年08月05日(木)
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