Mother (介護日記)
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2003年05月23日(金) 位牌

父の位牌は金色の屋根と扉の付いた“繰り出し位牌”と呼ばれる、
複数の法名を書いた位牌(板)が入れられるものだった。

一番手前には、黒塗りの板に『○○家先祖代々』と書かれている。


父が亡くなったのは私が小学校4年生の時だったし、
仏壇の中にあったものだったので中を開けたことはなかったのだが、
この繰り出し位牌に、父以外にもう1枚の位牌が入っていた。
法名の他に『死産児』の文字がある。 

その筆跡は父の法名と同一のものであるので、
この繰り出し位牌を購入した時に一緒に書いてもらったものだと思われるが、
亡くなったとされる日付が一部加筆されているので余計に混乱した。

『昭和25年』というのは“両親が結婚するより10年も前”という計算になる。

この子は誰の子なのだろうか?

母は、私を産む前に一度男の子を流産をしたと言っていたが、
この位牌についてはまったく聞いたことがなかった。

日付が正しいと仮定すると、父の先妻の子だろうか?
義兄に聞いてみたが、その件については全くわからなかった。

結局、母が保管していた状況から判断して、これは母の子なのだろうと推測された。
そして父が亡くなった時に繰り出し位牌を買って、ここにひとつにまとめたのだと思われる。


葬儀屋さんの話しでは、
故人の持ち物の中からそういった古い位牌が見つかった場合には、
故人の棺に入れて一緒に火葬をするか、もしくは納骨の時に一緒に納めるのだと言う。


そこで先日、戒名をいただきにお寺に行った際、ご住職にうかがってみたところ、
誰の子供であっても母に縁のある人に代わりは代わりないのだから、
やはり納骨の時に一緒に納めるのが良いとのことだったので、そうすることにした。

そしてこの繰り出し位牌にはもう入る予定の人がいないので、
この機会に新しく位牌を購入し、1枚に両親の法名を連ねてもらうことにした。
繰り出し位牌の中から2枚の位牌だけを取り出して持ち帰り、
繰り出し位牌本体はお寺でお焚きあげをしていただくことになった。

その帰り、レフティーと一旦別れて私はひとりで仏具店に位牌を見に行った。


勧められるままに黒い塗りの位牌を選んだのだが、
私はどうもその金の縁取りが気に掛かっていた。
もっとシンプルでいいのにと思って店内を回っていたところ、
漆を塗っていない派手な装飾もないこげ茶色のものを見つけた。

「それは黒檀ですから。 重みもまったく違います」 と言われて、
これは私にはとても手が出ないような高価なものなのだろうと勝手に思い込み、
価格の確認をせずに、先ほどの黒塗りの位牌に決めてしまった。

ところがどうしても黒檀の位牌を諦め切れず、
レフティーと合流した後、価格を聞くだけ聞いてみることにしたら、
先ほどの黒塗りに少し足した程度だったので、即座に変更をしてもらった。



そうして両親の法名を書いてもらう黒檀の位牌が、
四十九日法要に合わせて今日までに仕上がる予定だったのだが間に合わなかったので、
明日は白木の位牌を持参することになった。

四十九日を以って白木の位牌から塗りの位牌に替えるものらしいのだけど、
実際には母が亡くなってからまだ4週であるから、まぁいいとしよう。

新しい位牌が出来上がったら、それをお寺に持参して、
“入魂”のためのお経をあげていただくことになる。
それは特別急ぐ必要もなく、新盆ぐらいまでにすれば良いとご住職はおっしゃっていた。


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