Mother (介護日記)
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2003年04月04日(金) |
入院12日目 ( リハビリ ) |
タクシーの中から通り過ぎる景色に見る満開の桜・・・
今日は絹江も一緒だった。 「あら、絹ちゃんも来てくれたの?(^▽^)v」
絹江は、たった今、取って来たばかりの制服を広げて見せたが、 「何の制服? 会社の制服?」 などと言って、 絹江の進学についてまったく理解していなかった(^_^;)
まぁいい。 母は、こっちの方が喜ぶだろう。 昨日の主治医のK先生とのツーショットをアルバムに追加してあげた。
「あ〜 K先生だぁ。この先生、いい先生だよね♪」
隣の患者さんに、今日もリハビリのI先生(理学療法士?)がやって来た。 20代後半ぐらいか?
「はい、○○さん、今日は少し立つ練習をしてみようかぁ!」と元気良く来るのだけど、 当の○○さんは、「ううん、いい。 今日は疲れたから」 などと断ることが多い。 「え? 疲れたの? 何にもしてないじゃん(^_^;)」 「昨日、お風呂入ったから」 「あぁ、お風呂ね・・・でも、それって昨日じゃん。 今日はまだ何もしてないよ?(-_-;)」 「でもいいの。 ありがとね、また今度」 「え? いいの? ずいぶんアッサリだなぁ(^_^;) そう? やらない? それじゃ、また明日ね」と、 彼もまたアッサリと引き上げていくのだった。
次に振り返って母を見た。
「はい、○さん、今日からリハビリをしますよ〜♪」 「リハビリ?」 「体操の先生だって」 「あぁ、そう」 「じゃぁ、ちょっと起きて、こっちに脚を下ろしてみようか」 「え? 何するの? エホエホ・・・」 「じゃぁ、靴を履いて立ってみようか」 ここで靴下と靴を履かせる。 「少しこのまま座っていられるかな?」 「え? エホエホ・・・ 座って? ここにつかまっていればいいの? エホエホ」 「ううん、つかまらないで、座っていられる?」 「はぁ・・・なんだか・・・せつない・・・息が・・・エホエホ・・・もうダメ・・・」
母はそのままズルズルと、ベッドに斜めに寝転んでしまった。
「はぁ・・・せつなくて・・・とても体操どころじゃ・・・ない・・よぉ」
「桜の花見に行かなくちゃ。 温泉にも行くんでしょう?」 と言ってみたが、
「花見どころじゃないよ、苦しくて・・・」 といつになく乗って来なかった。
ベッドに背もたれがなくては、とても座っていられず、 そんな状況では、到底立って歩くなどできそうにない。
「家の中ではどんなでしたか? ひとりで歩けましたか? 手すりとか? 杖とか?」
うちは狭くて壁には家具があり、手すりを付けられるところがない。 はぁ、しかし、杖と言うのは室内でも使うのか・・・ 考えたことがなかったな。
「先生はなんとおっしゃっていましたか?」
生きているのが不思議なくらいだと(^_^;)
痴呆もあるし、今はできるだけ毎日が楽しく過ごせるように不安なことがないようにケアしている。
「あ、先生、母とのツーショットを撮らせていただいてもいいですか?」
「あ、いいですよ(^_^;) なんか、ここにもK先生の写真が・・・」
息を切らしながらも、しっかりピースサインをしている母を見て先生が笑っていた。 これでまた母のコレクションがひとつ増えた。
「今度は若い先生だからね、かわいいパジャマを着なくっちゃ♪」
「あははぁ♪ よろしくお願いします(^▽^)v この子もよろしくね♪ こっちが娘、こっちが孫」
* * * * *
余談。
そう言えば、先日も孫に間違えられたなぁ。 隣の○○さんが 「毎日ご苦労様。 いいですね、優しいお孫さんで」 と言ったのを、 「娘です」 と返したら、カーテンの向こうでおむつ交換をしていた看護婦が 「え?! 娘さんだったんですか? ずっとお孫さんだと思ってました!」と飛び出して来た(^_^;) カルテをちゃんと見てるのかな? 間違えられるのは毎度のことだけど。
孫ばかりが世話をしているとしたら、余程特殊な家庭じゃないか(笑) 私が高校生の頃は、近所の人に「おばあちゃんとお孫さんが住んでいる」って思われていたが、 思えば、私が歳の離れた母親を『お母さん』と呼ばなかったのもいけなかった。
* * * * *
絹江は売店で買ったおにぎりを持って、春休みの宿題をやるために食堂に行ってしまった。
母には絵合わせパズルをやらせた。 20ピースはむずかしいので、 何をどこに置くのかを、絵の裏側と台紙に数字を書いてあげたら、さすがにできあがるのが早い。 そのうちに絵を覚えてくれば、数字を見なくてもできるようになるだろう。
パズルの2回目が終わる頃、食事が運ばれて来た。 食べる前から 「もう、おなかがいっぱい。 食べられない」 と言ったのには驚いた。 おかゆもおかずも、器ごと、まだかなり熱かった。 豆腐のハンバーグに金糸卵とゆでキャベツ、大根としいたけとタケノコの煮物。 少しづつ食べたが、やはりすぐに「いらない」と言った。
私の苦手な看護婦が、カーテンの向こうで他の患者さんの世話をしながら、 「ダメですよ、ちゃんと食べないと、お薬が飲めませんからね!」と言ったので、 母は姿の見えない声にビックリしていた。
でも結局、今日は3割程度しか食べられなかった。
動かないので食べられないのだと言う。 確かに。 これからは、夕食前に車椅子での散歩をして様子を見よう。
リハビリのI先生からは、 「ベッドの上でもできるだけ体を起こしているように」 「車椅子で院内を散歩するのも良いと思います」 とのことだったし。
とにかく痩せた。 入院後、体重を計っていないが、太ももも、すねもホントに細くなってしまった。 万年妊娠6ヶ月のような下腹も、今はペッタンコになってしまった。 食べなくては、セキこんだ時の体力消耗に追いつかなくなってしまう。
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