Mother (介護日記)
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2003年03月04日(火) 今日じゃなくても・・・

確かに、私に非があると言えば、そうだろう。

今夜は母をお風呂に入れた。

1週間に1度程度、母の入浴を予定しているが、
結局は私の体調と都合により、かなりいい加減になってきている。

もちろん、今が寒いせいもある。
汗をびっしょりかくわけではないし、風邪を引かせたら大変だ。
そもそも、近頃は、自分がお風呂に入ることさえ億劫になっているのだ。

で、今日は体調も良く、入れることにしたのだが・・・

なぜか、いつもタイミングが悪い。

絹江は夕方4時に帰宅しているのに、
焼きそばを作って食べたり、私とじゃれたりして、
明日が高校入試だというのに、一向に勉強を始める気配がなかった。

そろそろレフティーも帰宅しようかという7時頃になって、やっと机に座ったのであった。

そこで、私がお風呂に入り、
しばらく母を入れていないことに気付き、今夜入れることにした。
今夜は、自分がすべて洗い終わって充分に温まってから、
居間で1人でテレビを見ている母に声を掛けると、
外で車の音がして、ちょうどレフティーが帰宅したらしかった。

母は、すでに1人で服を脱ぎ、
絹江の手を煩わせずに風呂場に呼び寄せることができたのだが・・・



母がお風呂から上がる間際にレフティーと絹江の会話が聞こえ、
続いて玄関のドアの開く音、車のエンジンの音が聞こえてきて、
どうやらレフティーは再び外出したようだった。



絹江が明日、公立高校の後期試験なので、
レフティーは縁起を担いで絹江に「カツ丼」を食べさせるべく、コンビニまで買いに走ったのだった。

今日は、一昨日の陽気と打って変わって冷え込んだので、
良いお天気ではあったが、私は買い物には出なかった。

家族はあり合わせのおかずで済まそうと思っていたが、
なんとしても、絹江には「カツ丼=勝つ丼」を食べさせたいレフティーの親心であった。



母がお風呂から上がる時、最近は、絹江に頼らず、レフティーにもお願いをしている。
今日も、私はタイミングが良ければレフティーにお願いしようと思っていた。

ところが、出かけてしまったので絹江を呼んだ。

返事がないので、レフティーと一緒に外出してしまったのかと思い、
『私がやるしかないか』とバスタオルを巻いて浴室を出たら、
トンでもない時になって絹江が返事をした。

なんだ・・・いたのか。

「バスローブ、とって。」

やっと、勉強をやる気になったところを中断された絹江は不機嫌だったので、
私もバスタオルを巻いて、母に付き添って部屋へ連れて行った。

それでも絹江がフォローに来てくれたので、私は冷えた体を温めるため、
その場を絹江に任せて浴室に戻ってしまった。



その後である。


ドタン! バタン! と大きな音がして、絹江のなにやらキレた声が聞こえてきた。

やっぱり、着替えを手伝わせたことを怒っているのだろうか・・・


私が温まって浴室から出たあと、
レフティーもカツ丼を買って戻り、絹江にそれを報告に行ったようだった。
私はとりあえず、下着だけを着て母の様子を見に行くと、まだ髪の毛が湿っていた。

“ドライヤー、かけてくれなかったのかぁ? 風邪引くじゃないか・・・”

私は、やっと呼吸が落ち着いたばかりの母をベッドから起こして、ドライヤーをかけた。



絹江の部屋から出て来たレフティーが私に「絹江はどうしたの?」と聞いた。

「はぁ? 何が?」 
ドライヤーをかけずに放置した絹江に対して、私は少しばかりの不満を抱いていた。


「泣いているからさぁ・・・」

「はぁ? 着替えの手伝い、したくなかったんでしょ?
 勉強の邪魔をされたとかなんとか。
 夕方早くに帰って来て、今まで遊んでいたくせに・・・」 

私は、絹江の勉強の邪魔をしたことに申し訳ないと思うのに、逆に文句を言っていた。

「私の言うこと、聞かないんだから、あなたがちゃんと言って!」

仕事で疲れて帰宅したばかりのレフティーは、受験の娘のためにカツ丼を買いに走り、
さらには泣いてる娘のフォローにまわらなくてはならなかった。

「だってね、着替えとかちゃんと手伝って、お水まで渡してあげたのに、
 私のこと“バカ”って言ったんだよ?」


なんだって?

どうやらドライヤーが熱かったらしいのだが、普段温厚な母が暴言を吐くというのは・・・


「ちょっと、おば〜ちゃん! 絹江に“バカ”って言ったんだって?」

言っている私も、
おそらくはそれを隣の部屋で聞いてるレフティーも絹江も、
それがいかに無意味で愚かな発言であるかを知っていた。

だけど、言わずにいられなかった。

「え? 絹江ちゃんに“バカ”って言ったの? 私が? なんでだろ?」

自分がついさっき言ったことさえ、覚えていないのだ。

「おば〜ちゃん、絹江に謝ってよ」 とは言ってみたものの、
お風呂上りで補聴器をつけていない母が言った言葉は、

「夜のご飯、まだ?」 であった。



 * * * * * 



予告を見ていたので、今夜の2時間ドラマ『介護家族』をみんなで見た。

このドラマは、
脱サラした夫(峰竜太)がケアマネージャー試験に合格し、自宅を改築して施設を作り、
妻(室井滋)とチカラを合わせてデイサービスを提供する、と言うものである。

痴呆老人に南田洋子、その娘に深浦加奈子。

仕事に出かける深浦は、徘徊の危険がある南田をベッドに縛り付ける。

『なんてことするんですか! あなた、自分のお母さんでしょ!』

『周りの人もみんなそう言う。“娘なんだから看て当たり前だ”って。
 自分の親だから困るんじゃない。 
 あなたみたいに仕事と割り切って、時間で終われるわけじゃないのよ?
 そんなこと言うなら、あなた、24時間預かってよ!
 毎日こうして、どっちかが死ぬまで続くのよ?
 あなたが引き取って、一生面倒見てよ!』

確か、このようなやり取りであった。

このシーンが予告で夕方に流れていたので、見てみようと思ったのだが、
やはり泣けた。



 * * * * *


本日、入浴前の体重、39.5kg。

難聴と痴呆の母の介護は続く。



・・・書いてるうちに、母がトイレに起きてうなる。
もちろん、酸素は・・・はずしてしまっている・・・


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