僕はいつしか写真の中で作り笑顔しかできなくなってた。昔から写真写りは悪いから、撮られるということを敬遠してた。でもカメラを向けられてあからさまに逃げることはできないから、その場しのぎの笑顔をレンズに放り込む。現像されたフィルムをもらうとやっぱりそこには、僕じゃない僕がいる。僕の顔をしたもう一人の嘘の僕。 いつしか写真の中でうまく笑えなくなった。いつからなんだろう。記憶の線を辿ってもそれがいつからなのか上手く思い出せない。異性を意識しだした頃なのか、少年時代の集合写真の頃なのか。 でも本当は、作り笑顔しかできなくなったんじゃなくて、笑えなくなっただけなのかもしれない。それも儚く悲しい。 思い出を切り取った写真の中の僕は、やっぱり笑っていない。