世を忍ぶ仮の日記
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2002年11月14日(木)

電車に揺られて、窓の外の風景を見ていると、木々が色づいているのがたくさん見える。
雨が少ないから、河川の水は少ししか流れていないけど、太陽が照っていてきらきら輝いていた。
一番好きな風景だ。同時に、秋は怖い。
色づいた木を、一本一本、電車の中ながら、見る。
紅葉を見に、わざわざ行かなくても、四季はしっかり動いていて。
確かにずらりと並んだ紅葉樹は美しいのかもしれないけれど、きっとそこにはずらりと並んだ紅葉樹を見にずらりと人が並んでいて、ずらりと並んだ人々が綺麗か、と問われると首を横に激しく振りたくなるので、電車の中で充分だと、各駅停車の電車に揺られながら思った。
「寒くなってきて、秋っぽく」とはいつも言うけれど、最近は、寒くなって暖房がつきはじめると、秋をしみじみと感じる。洋服もどこまで厚着をするべきなのか、毎日見当もつかない。それが秋。
電車の中では紅葉樹が綺麗に見えた。黄色もあれば、燃えるような赤もあって、遠くから見ると、一本一本が頑張って、毎年生死を繰り返している気がした。
だからか。
間近で、一本の小さな紅葉樹を見た。
ゾッとした。
葉が、半分だけ残っていて、来年にはまた絶対に復活して若芽を吹くのは分かっているけれど、秋には確実に、一度木として死んでいくように見える。
思わず目をそらしてしまった私は、もしかしたら医療従事者にはなれないくらいに弱いのかもしれない。
針葉樹が良い。
秋の終わりから、冬にかけての蓄えを、緑の葉を深く深く染めて、栄養をたっぷりと全身にため込む。冬の針葉樹はあったかい。
葉が無い木は、怖い。
でも冬は好きだ。



今日は1日中、どこか遠くのあっち側の世界にいた。
帰って来られなくてもよくなってきた。
どっち側にいても、身が一緒だ。
忌むこの体。
「休むなら今しかない」という、ゲンゲンの言葉が、入院でもしたら? という囁きに変化したが、やるべきこと、やりたいことはまだあった。
やりたいことがたくさんあるのが、不思議だった。
欲しいものもたくさんあって、たくさん買い物をした。
何故欲しいのか問われれば分からないが、欲しいと願う、私が買った。



昨日が終わる頃には妹と自然に仲直りしたばかりなのに、帰宅早々母親と大喧嘩をした。
唐突に電話を切って、電話線切って携帯の電源を切った。
「帰ってから聴かせてくれてない」
「私は帰って直ぐに弾いてって言われたから弾いた」
「あんなん新幹線から降りて直ぐなんだから弾いた内に入らない」
「私は、人前で弾く時に、弾いた内に入らないような弾き方はしてないつもりだし、途中で確かに体力も精神力も尽きたけど、それまで25分必死に、一生懸命弾いた。それでも弾いてないって、ずっとずっとずっとずっと言われて。腱鞘炎でマゼッパ弾けないって言ったらダメなの? こないだ夏に私が一生懸命弾いたのはなんだったの?」
「でも疲れて弾いたんじゃけ(プツン)」
耐えられなかった。
号泣しながら反論して電話切って吐いてまた号泣した。
私は人前でピアノを弾く時に、いい加減な気持ちで弾くつもりは無い。
集中力が、切れるまで、限界まで弾いたのに、何も伝わらなかったのが哀しい。
言葉足らずよりも、音楽足らずの方が、
生きる価値を見失わせる。


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