日々のカルテ
There is no accounting for tastes.

2004年03月10日(水) そう


目覚めの悪い朝から始まる。

実家に帰ってからというもの、すこぶる目覚めが悪い。春眠なんたらというがそんなものでもない。暁を覚えないほど気持がいいものならもう少し良い目覚めをサービスしても罰は当たらないはず。
そんな悪態をつきながら寝床をごそごそ抜け出す。ベッドの上に寝ていたはずの愛猫はもういない。彼女の朝は早い。餌を食べたらすぐ外へ飛び出してしまうのだ。

気ままなものである。
だから猫なのだ。

枕元においていたメガネを掛けると、レンズは余所行きの服に着替えた母親を映した。
あぁ、今日は街に下りる日だ。
9時には出発するといっていたが、携帯を見る限りではもう過ぎている。
寝過ごしたと思った一瞬後、洗濯機の回る音が聞こえてきて考え直した。今あの中で回っている洗濯物を干すまでが自分に与えられた猶予だと。
一通りの会話をしながら手早く顔を洗い、メガネからコンタクトに、歯を磨き、洋服に着替える。
一階に降りるとテーブルの上には温泉卵に黒豆納豆、明太子が器にこじんまりと盛られていた。それを見つけ、いずれも好物だったために、歓声を上げる。普段は自分で用意している朝食なだけに感動も一入なのだ。

「あ、なんだ、朝ごはんあるんだ?」
「そうよー、ロールケーキ食べる?」
「食べるー、あと、コーヒーもほしいなぁ?」

母にそう言いながら自分は茶碗の半分ほどにご飯を盛り、箸を取る。
朝はそんなに食べる気がしない。というより、胃にそんなに入らない。特に目覚めが悪いときなどは体中が寝ていないようにくたくたで、とても消化できる自信がない。
温泉卵の真ん中を割ると黄身がとろりと出てくる。しかし、自家製の温泉卵のため、黄身は完熟よりの半熟である。気にせず朝食を摂っていると何やらとんでもない轟音が聞こえ出してきた。
もう、なんというか、滝の傍に寄ったときのあの轟音。あれに似ているのだ。

「ねー、何で洗濯機こんなに音すごいわけー?」

大声で話さないとあたしの声は2席分ほどしか離れえていない母の耳には届かない。洗濯物の滝にかき消されてしまうのだ。
それは母親も同じことのようだった。

「どうも、脱水の時に機械がバランスをとる所、バランサーだったかなぁ?それが壊れちゃってるらしいのよ」

帰ってきた翌日に、洗濯機がものすごい音を立てて脱水するという話は聞いていた。しかし、あたしにはまったくその音は耳に入っていなかった。
その音にも気付かずに眠るだけの図太い神経があるためか、はたまた睡眠に対して意地汚いのか。
いずれにせよ、今朝が正真正銘の初体験なのだ。

「その内その洗濯機踊っちゃうよー?」

そう言うと母はカラカラ笑った。
近頃の洗濯機はよく歌う。洗濯物が出来上がったときと始めるとき。それ以外でも歌う家電製品が多いものだから、次は踊るものかと思いついた。が、それは単にバランサーがイカれてしまっているものだ。何より、あんな巨体や高いところにあるものに踊られてはこっちがたまらない。



本日の買い物の戦利品はヘアトリートメントとCD2枚。
シングルとアルバムと1枚ずつ。
どちらも、昨日テレビで見て猛烈に聞きたくなった曲が入っている。
それに加え、母親が服を買う綿服の店でかるかんとコーヒーをご馳走になった。
なじみの店で買い物をしたりすると、2,3年より以前からあたしのことを知っている人たちは、会う度に「痩せたねぇ」「きれいになったねー」という。
あたしは、昔からすると8キロも痩せた。
痩因は試験によるストレス。
何かと大変なのだ、あたしも。
あたしだけじゃない、テスト時期はみんな大変だ。
体の不調を訴えるものがいて当然のテスト期間というのも、慣れてしまえばネタになって中々面白い。
そんな状況を楽しまなければ、やっていけないのだ。
関西には、中々芸人な子が多いのだろうか。おかげでかなり楽しい学園生活を送っている。
もうひとつ、大事な戦利品。

馬油。

ガマの油である、つまりは。

ここ数日家の大掃除を一人で敢行していたため手荒れが前に増してひどくなってしまったのだ。ハンドクリームもない、それ以前に愛猫に引っ掻かれた傷があるからそんなものは付けられない。
馬油ならば傷にも遠慮なく塗れる、副作用のない天然物である。
能書きによれば、成分が皮膚の新陳代謝を活性化することで傷が速く治るなどの効果を挙げるらしい。
早速塗ってみたが、数時間で手荒れがよくなるのであれば、きっとあたしは化け物かもしれない。
即効性を期待するより、継続して様子を伺う製品なのだから。



 そこ。  ここ。  どこ。


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