2009年04月23日(木) |
GMグループの解体がはじめる |
報 道
1、GM、独オペルの経営権を実質無償で譲渡 英紙報道 2009年4月20日 日経 2、社説 経済危機が促す自動車産業の進化(4/20) 2009年4月20日 日経 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は20日、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)が、欧州子会社の独オペルと英ボクソールの経営権を実質的に無償で譲渡する見通しであるという。 GMが無償で経営権を譲渡する先 ・独 オペル ・英 ボクソール ・スウェーデン サーブ 米国内で14工場の閉鎖も検討されている。GMは再建できたとしても、最盛期の1/3余りの規模になるのではないか。繰り返すが正常な再建は難しいと思う。社説に「過剰生産能力を解消し、需要水準にマッチした生産体制に移行する」とあるが、GMの動きの加速とともに需要水準にマッチした生産体制になると思う。それにしても激烈な競争である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1、GM、独オペルの経営権を実質無償で譲渡 英紙報道 2009年4月20日 日経 【ロンドン=清水泰雅】英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は20日、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)が、欧州子会社の独オペルと英ボクソールの経営権を実質的に無償で譲渡する見通しであると報じた。GMは売却先候補に対して最低でも5億ユーロ(約640億円)での株式取得を求めているが、その資金は直接オペルなどへの投資となる見込み。実質的には、GMは無償で手放すことになるとしている。 GMのヘンダーソン最高経営責任者(CEO)はオペルの売却先候補として6以上のグループと売却交渉を進めていることを明らかにしている。GMはオペルの経営権は手放すものの、一部株式は継続保有する可能性はあるという。 またFT紙によれば、GMは2月に経営破綻したサーブ(スウェーデン)も、同様に無償で譲渡する見通しであるとしている。GMの欧州事業は、赤字決算が続いており、GMにとって大きな負担となっている。そのため、無償でも早期に売却して、負担を減らす考えだ。 (23:02)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2、社説 経済危機が促す自動車産業の進化(4/20) 2009年4月20日 日経 自動車産業の苦境が長期化している。昨秋の米リーマン・ショックを機に、日米欧の主要市場で新車販売が急減し、半年たった今も本格的な立ち直りの気配は見えない。
日産自動車のカルロス・ゴーン社長によると、2009年3月期は6200万台だった新車需要が、10年3月期には5400万台まで減少するという。クルマ1台の平均単価を150万円とすれば、12兆円の需要が消えてなくなる計算だ。
成長から生き残りへ
未曽有の危機に直面して、自動車各社は「成長」から「生き残り」に経営の軸足を移した。日産自動車は毎年5%の売り上げ増をめざす中期経営計画を凍結し、現金収支の黒字化を経営目標に掲げた。
小型車に強いスズキは鈴木修会長兼社長の号令で、消しゴム1つ買うにも会長決裁がいるケチケチ作戦を展開中だ。「業績が好調だった時代にコスト構造が緩み、『乾いたぞうきん』どころか『ずぶぬれのぞうきん』になっていた。これをたたき直す」と鈴木会長はいう。
各国政府も基幹産業の危機を座視できない。米政府は米ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーに公的融資を供与している。
米世論は2社の救済に否定的な意見が多いが、雇用などへの影響を考えると、何の備えもなく両社を倒産させる選択肢は取れなかった。フランスやロシアでも政府が自国メーカーへの低利融資に踏み切った。
需要喚起のための助成措置も世界に広がっている。ドイツでは車齢9年以上の古いクルマを新車に買い替えると2500ユーロ(32万円)の補助金が支給される。日本でもドイツに倣った補助金の支給が追加経済対策に盛り込まれた。
こうした施策は1つ1つを見れば妥当な措置といえるが、全体として浮かび上がるのは政府依存を深める自動車産業の姿だ。「政府支援が民間企業の生き残りの決め手」という事態は、正常なものではない。この状態からどうすれば脱却できるか、自動車業界は痛みを覚悟の上で一歩を踏み出す必要がある。
まず取り組むべきは、過剰生産能力を解消し、需要水準にマッチした生産体制に移行することだ。
GMは2012年までに米国にある47工場のうち、14工場を閉鎖する計画だが、スピード感に欠ける。より素早く計画を実行に移す手段をGM労使や米政府が一体になって考えるときだ。米クライスラーは伊フィアットと提携交渉中だが、世界規模の再編集約も生産能力の過剰や競合プレーヤー数の過剰を整理するための1つの道筋だろう。
危機を経て自動車市場の姿が大きく変わるのは必至だ。日本メーカーのドル箱だった米国市場は需要が戻ったとしても、以前の水準に届かず、8割程度にとどまりそうだ。車種構成も廉価な小型車の比重が高まり、高収益の復活は望み薄である。
一方で成長が期待できるのは中国やインドなどの新興国市場だ。人々のクルマへのあこがれは想像以上に強く、政府が需要喚起策を導入したとたんに新車販売が急回復した。
こうした市場では、売れ筋のクルマも日米欧とはひと味違う。インドのタタ自動車が約20万円の超低価格車「ナノ」を発売して注目されたように、低価格の追求がカギを握る。日本企業にとっては、コスト競争力が試される局面だ。
もう1つ忘れてならないのは環境対応だ。地球環境問題に関心が高まるなかで、化石資源を燃やして走る自動車の基本構造が変革を迫られている。足元の経済危機に対応しつつ、長期の課題である環境技術の開発を同時並行で進めることが自動車産業に課せられた使命である。
新たなライバルの登場
エコカー(環境対応車)は、トヨタ自動車やホンダなど日本勢がリードしてきた分野だ。「危機の効用」ではないが、各国の新車購入助成がエコカーの普及を後押しすれば、日本企業の商機も広がるだろう。
ただ、長期でみれば環境技術をめぐる競争の激化は必至だ。ライバルは既存の自動車会社だけではない。新型電池を研究する米シリコンバレーのベンチャー企業や、各国政府傘下の研究機関、さらには電機メーカーも潜在的な競争相手である。
技術が変われば、産業の秩序も変わる。現時点の日本勢のリードは序盤戦のリードにすぎず、研究開発の一段の強化が求められる。
自動車産業に深い危機を刻んだ2008年は世界初の量産車「T型フォード」が誕生して100年の節目だった。トヨタの豊田章男次期社長は「次の100年も社会が自動車を必要とするのか、今が瀬戸際だ」という。
日本経済をけん引した自動車産業がV字型の復活は無理としても再生の手がかりをつかみ、将来の成長に向けて布石を打てるかどうか。私たちも注目したい。
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