北海道在住Rさんの場合。
あのさぁ。 俺さぁ。 苦手なものがあってさー。 足のイッパイある虫ってダメなんだよねぇ。 ムカデとか? 北海道にはあんましムカデいないけどさー。 なんかいるじゃん。 ムカデみたいなの。 あれ駄目なんだよねぇー。 あと、カマドウマとかさー。 ヤツらキモイんだよー。 なんかイキがよすぎなんだよぉ。 足とか取れても動いてるしぃ。 素早いしぃ。
でもねぇ。 俺が一番嫌いなのは 蜘蛛さ。 あいつらときたら どこにでも現れるじゃんかー。 家の中とかさー。 たまに玄関に蜘蛛の巣張りやがるしよぉ。 あの蜘蛛の巣が顔にかかる感触が 一番きれぇなんだよぉ。 吐き気がするんだよぉ。
だからさー。 俺は蜘蛛を見つけたらさー。 こう。なんつーの? 憎さもあって 必ず始末しちゃうわけよ? 分かるでしょ? 無駄な殺生はしちゃいけませんって いうけどさー。 人間の心理としてはさー。 嫌いな物が少しでも減ればーとか 思っちゃうわけよ? まぁ、殺生を正当化するわけじゃないけどさー。
とにかくさ。 蜘蛛を見つけたら 踏み潰したりしちゃうわけよ? でね? 一度、バス停で待ってる時にさ。 目の前の立ち木に 一匹の蜘蛛を見つけたわけさ。 枝の方から糸にぶら下がって ツツーっと降りてきたわけよ。 そりゃーびっくりしたね。 だって俺の顔のすぐそばだったからさ。 ウキャ! とか奇声発して飛びのいちゃったもん。 他に誰もいなかったのが救いだね。 ほんと。
恥ずかしさもあって この俺を驚かせるなんて虫がぁー! とか思うわけじゃん? で、俺は持ってたライターであぶってやることにしたのよ。 おおっと!残酷だなんて思わないでくれよ? 基本的においらはピースフルなんだぜ? でも蜘蛛だけは許せないんだよ!
つーことで 糸からぶら下がってる蜘蛛を ライターの炎であぶってやろうと 点火して近づいたのよ。
さすがの蜘蛛もそりゃぁー参ると思うでしょ? うん。だって炎だもんね。
俺も「食らえ!」
みたいな感じで炎を差し出したわけよ? あっという間に蜘蛛は焼かれて ミッション終了になるはずだったのに
その時、突然風が吹きやがってよぉ。 炎が蜘蛛じゃなくて
俺の手をあぶったわけよ。
なんせ俺の持っていたライターは ジッポライターでさぁ。 多少の風じゃぁ消えないのよ。 それが俺の手を焼いたってわけ。 俺は熱さのあまり ジッポを放り投げてしまって 愛用のジッポはアスファルトの上を カラカラカラー。 と乾いた音を立てて滑っていったのさ。
びっくりだろ? ありえねぇだろ? 神様が、殺生をしようとしている この俺を懲らしめたのかと思ってしまったぜ。
でも俺はそんなことではめげないさ。 風や蜘蛛ごときに馬鹿にされてたまるか。 ここまできたら ミッションを成功させてやるぜ。 そう思ったわけよ。
でな? 俺は遠くまで放り投げてしまったライターを いそいそと拾いに行ってだな。 また蜘蛛のところへ戻っていったわけよ。 それから再度、炎であぶってやろうと 点火したわけよ。 今度は風が吹いても炎が揺れないように もう片方の手で風を遮って。 失敗は成功の元っていうからな。 同じ失敗を2度は繰り返さないぜ。 カッコイイ俺。
まぁ、あの時の俺は ちょっと自分に酔っていたってのもあるかもな。 冷静な判断力を失っていたのかもしれない。 でもまぁそんなことは今言ってもしょうがないさ。 ともあれ俺は 今度こそ蜘蛛をヤっちまおうと 炎を近づけたのさ。 風はない。 蜘蛛は動かない。 よし。 今度は大丈夫だぞ。
そう確信してたさ。
でもさ。 君は知ってるかい? 蜘蛛の糸がなにでできていることを。 その特性を。 俺は知ってたんだけどさぁ。 すっかり忘れてしまってたなぁ。
蜘蛛が焼かれるより先に 糸が切れて 蜘蛛が俺の手の上に落ちるまでは。
ひんぎゃー!!! 蜘蛛がぁ! 蜘蛛が手にぃー!!!
俺はパニクっちまったぜ。 俺としたことが 完全に我を見失ってしまったぜ。 俺の体はその瞬間、ビクン!と大きく痙攣し 蜘蛛を手から落とそうを 思いっきり手を振ったさ。 あの大嫌いな蜘蛛が 俺の肌に触れているなんて耐えられなかったからね。
その時さぁ。 また、愛用のジッポまで放り投げてしまってさぁ。 長年使ってた結構高いジッポなんだぜ? それがさぁ。 カラカラカラーって滑って行ってさ。
排水溝にぼちゃん。 だって。
はははー。 笑えるだろ? な?あははー。
俺のバカー!!!(滝涙
|