2001年08月01日(水)



何気なしに立ち寄った。
用事があったわけではない。
足が向いたのはなぜだろうか。

数え切れないほどの商品が陳列されている棚。
僕はその中を歩く。
色とりどりの商品は
どれも僕の目を引いた。
ひとつひとつに
それぞれの魅力があった。

だが僕はそれらを手にとることはしなかった。
手にとってしまえば
それを自分のものにしなければ
気が済まなくなるような気がしたからだ。
僕はただ
陳列棚の間をフラフラと
眺め歩くだけだった。
視界を、商品ケースが、写真が
横へと流れる。

その時だった。
視界の隅に写った一枚の写真に
慌てて目を戻した。
驚きだった。
信じられなかった。
その一枚の写真に写っている人物には
見覚えがあった。

それは・・・・
それは、昔とても好きだった女性。

なぜこんなところに。
思いがけない再会に
僕の身は打ち震えた。
恐る恐る手を伸ばし
その写真を手にとってみる。
周りの目など気にする余裕はなかった。

その写真に写っていた女性は
にこやかな笑顔で僕を見ている。
その視線を受け止めるかのように
僕は彼女の顔を確認した。
ほんとうに彼女か?
僕の知っている彼女か?

きっと心底では
こんなところでの再会は
望んでいなかったんだと思う。
無意識にも
この女性が、あの人ではないんだという
証拠を探していた。
あの人ではないんだと思いたかった。

しかし
古い記憶の中のあの人と
賢明に照らし合わせるが
どうもはっきりとしたことは分からなかった。


とてもよく似ている。
本人かもしれない。
でも別人かもしれない。
とにかくよく似ている・・・。


しばらく写真に見入っていたが
はっきりしたことは分からなかったので
それはきっとあの人ではないんだ。
ただの他人の空似だ。
そう思うことにして
雑念を振り切るようい写真を置いた。


その後も
プラプラと店の中を歩き回ったが
どうにも彼女のことが頭から離れなかった。
ああ。
あの時の片思い。
思い出してしまったよ。


あの人は今どうしているだろう。
あの頃、僕は彼女に夢中だった。
遠慮がちに笑うあの仕種が
とても好きだった。

ねぇ。君。
今、君はどこにいるの?
なにをしているの?
僕のことは覚えていますか?
今でも、あの優しい笑い方をしていますか?




ある夏の日。
レンタルビデオ屋のAVコーナーにて。

いや。うそ。ごめん。話作った。

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日記才人