ここんとこの円高のおかげで薔薇が安いのはありがたい
昔っから義理の叔父(大魔人の妹の連れ合い)ほど嫌いな人間はない。 目立ちたがり屋で功名心の凝り固まり、虎の威を借る狐、金にしみったれ、人に恩を重ね着させる。 礼儀も礼節もあったもんじゃない。悪い意味での田舎者。 野暮で下劣で性根が醜くて、存在がネタなんじゃないかと錯覚する。 何かにつけて大魔人に「義兄さん」「義兄さん」とまとわりつき媚びる。 呼び鈴も鳴らさず人の家に上がりこみ、電話もかけてきておいて名乗らない。 名乗らないのはコイツだけなので分かるんだけど、ワザと「どちら様ですか?」と尋ねることを忘れない。 勝手に酒を出してきて飲み、それなら大人しく飲んでりゃいいのに、 それを買ってきたのは自分だと誇示し、人に無理やり飲ませるような輩。 ちなみに、本人が誇るその酒が美味かったためしがなく、うちでは料理酒扱い。 二言目には「金が掛る(掛った)」などと金金金金五月蝿い。 向こうも、アタクシを嫌っている。 去年大魔人の手術を病院の待合室で待っている間、その場所で携帯で話し始めたもんだから、 「ここ、携帯通話禁止。っていうより、病院では携帯の電源切っておくのがマナーでしょ」 と、待合室中に聞こえる声で皆の前で注意したのを、恥をかかされたと思っているらしい。(みちえさん談)
大魔人は、無神論者で宗教嫌いだったので、 「葬式無用。戒名無用」を機会がある毎に色んな人たちに話していた。もちろん義叔父にも。 ただ、大魔人の跡を継ぎ当主になる徳松(実弟・仮名)は、それはそれとして、 地域で暮らしていく母のために最小限の葬儀だけはしたほうがいい と判断し、我々もそれに賛同。 祖父が亡くなった折に入会したという互助会に連絡して、 家族と近隣に住んでる一部の親族だけでささやかに行おうと話し合っていた。
それが、そのくそ義叔父の出しゃばりのせいでとんだ茶番になってしまった。 自分たち(義叔父たち)が上手く取り仕切ってやるからと互助会に頼むのを止めさせ、 暑いのに自宅で行うことを強行させる。 普段付き合いがない、大魔人が嫌っていた遠方の親戚にまで連絡をしてしまう。 そのくせ準備で大変な時には仕事があるからといなくなり、後からやってきてちょこちょこと口を出す。 ここで言い返したりいざこざを起こしたら、我々がいなくなった後みちえさんがいじめられたりするかもしれないので、 じっと我慢していた。 大魔人の旧職場や知人からの献花は派手になるからと全部断っているのを知っているのに、 勝手に花(兄弟一同やら子供一同やらまご一同などと一緒に何故か単独で自分の名前だけ書かれた札あり)を注文し、 たまたま送られてきた徳松の勤め先の偉い人と同じ高さに自分の名札を掲げさせた。 狭い座敷に勝ち誇ったように高く掲げられたその名札に我慢できずに、 「遺影より高いなんて許せないし名札ばかりで暑苦しすぎる」と、 全部の札を献花から引っこ抜いて、庭に放り出した。 義叔父が名札がないのを文句を言ってきたらしいのだけど、 徳松から「遺影より高いから全部はずした。名札で葬式するわけじゃないから」と言われたら、何も言い返せなかったらしい。
通夜の食事の手配は、叔母(義叔父の連れ)にさせると言っておきながら、結局アタクシがする羽目になり、 本葬の禊(うちの田舎はこれが大事)は、義叔父が手配すると大風呂敷を広げておきながら、 こちらが確認した項目(箸や取り皿やコップなんだけど)は注文していなかったので後手配になり、 禊を始める時間を読むことが出来ず、料理の到着が大幅に遅れた。 義叔父は親戚連中に責められて、その場にいられなかったらしく、「仕事があるから」といなくなっていたらしい。 本葬の時に仕事とは何事だと今度は叔母が責められていたらしいけど。 これらのことは、アタクシは禊には出席せずにずっと台所にいたので、あとで実姉やよしこぴに聞いた。
翌日一緒に住職のところへ行って、今後のスケジュールの打ち合わせをする予定になっていたのに、 その日の朝になって 「今日はクーラーの取り付けがあるので、同行できない。花屋が集金に来るからよろしく」 と電話で言ってきた。その、やつが手配した沢山の花は、案の定ちゃんとうちに請求書が回ってきた。 そこでとうとうみちえさんが 「ここまでうちを馬鹿にするものほどがある! あんなうちの協力がなくても、今までだってちゃんとやって来たんだから、もううちのやり方でやらせてもらう!」 と宣言。 勇ましく出かけて行き、 「今後のことは家族内だけでやらせてもらいます」 と段取りをつけてきた。
徳松に、どうしてこんなにも好き勝手やらせておくのか、あんたがびしっと仕切らないのかを尋ねたら、 あんなにレベルの低い人間と渡り合うのに自分を低くさせるのは嫌だから、自分(義叔父)から馬脚を現すのを待ってた。 ら、料理の手配やらその後のことやらを考えると、まぁ今後あまり大きな顔をすることはなかろうと。 本当は献花の名札は奴のだけ残しておこうと思っていたら、(アタクシが)皆抜いちゃって、恥を掻かせるいい機会を逃したよ と、いけしゃあしゃあと言うもんだから、その腹黒さに恐れおののいた。こいつだけは敵にしたくない。
こちらから関わるのを一切なくして数週間が経った。
そしてつい先日、みちえさんからすごい報告があった。 叔母が突然に「(うちの)座布団が返してもらったものに混じっていた」と返しにうちに訪れ、 帰り際に義叔父に言いつかったと 「ご霊前のお金を間違えて入れすぎたから、差額分を返してほしい」 と言い放ったそうだ。 ちなみに、袋に書かれている金額と同額のお金が入ってはいたのだけど、その金額が他の家に比べて多かったので、 「おかしい」「何を考えてこの額?」と皆で気味悪がっていたのだった。 みちえさんは、そのセリフに呆れ果てつつも、特にお金のことで係り合うのは嫌だったので、差額分はその場で返したらしい。
そのことを聞いたのち、誰にこのことを話しても驚きこんなことは初耳だという。 もう、彼らが哀れでしょうがない。 そして、叔母とは少し血がつながっている自分が恨めしい。
|