天下無敵な過ごし方
ああ、今日も今日だねぇ。
ここんとこの円高のおかげで薔薇が安いのはありがたい
2006年09月14日(木) 上げ浚い

他の和事がどういう言葉を使っているのか知らないけど、
所謂「お浚い会」とか「発表会」とかそんな感じ。
それを料亭の広間で金屏風の前で緋毛氈の上に座ってやる。
今回は鳴り物(鼓や鐘)が入り、「一軍さん」と呼んでいる古いお弟子さん方、
最低でも5年ぐらい続けてるどこぞのお店の旦那(社長)やら先生(教授?)が一緒に演じた。
一軍さんは8月に既に自分たちの会での上げ浚いは終わったとのことなので、興という感じ。

画録帖にもアップしたけど、午後早い時間に料亭に着いて、最後の稽古。
この時初めて鳴り物入りの本番仕様の稽古をした。
アタクシ以外の方々は皆「唄い」さんなので、おっしょさんと奥さんの二丁三味線と鳴り物さん(とはいえこの方もお師匠クラス)、
アタクシは三味線なので奥さんの唄いになる。
番組(プログラム)順に淡々と稽古を進め、いよいよアタクシの番。
譜面を見るかどうするか尋ねられるも、昨日自分でした稽古でもそらでOKだったので、見ないほうを選択。
緋毛氈の上に座って三味線を受け取った瞬間に、頭の中が空っぽになっているのに気がついた。やや焦る。
その様子に気がついたのかおっしょさんが
「どうしたの?」
と尋ねられたので、
「頭の中が空っぽです。譜面も何も浮かびません」
と答えると
「大丈夫、ゆっくり弾きなさい」
とだけ云われた。
今年の目標は「見た目かっこよく」
ひざの先1mの畳を見つめ、目を泳がせないように注意。
DVDで見た去年の様子は、頭も目もふらふら動いて、とても格好悪かったのだ。
ひざの先1mだと、左手が視界の隅に見える。
その目線だと弦を押さえる位置を把握できることは個人の稽古で確認しておいた。
息を整えて、よ〜いと小さく掛け声をかける。
手は勝手に動く。頭の中にはぼやけた譜面が浮かんでは流れる。
が、何もかもが薄皮一枚外のような雰囲気で、自分の音は間違えたときにしか聞こえてこない。
去年はあんなに引っ張られたおっしょさん以外の声の唄も鳴り物も
不思議なくらい気にならない。
神経を三味線に集中しようとすると譜面が体から消える。
自分の体の中も空っぽになった感じだった。
時折、手も止まるが、判るところまで追いついてそこで弾き始める。
後半は半分ぐらいがそんなへっぴりな感じで、
弾き終わった時あまりの出来なさ加減にショックを受けた。
おっしょさんは、それもさして気にしないで、
「も〜っとゆっくり弾かないとフォローできないでしょ。
ゆっくり弾けば大丈夫」
とだけおっしゃった。
ふらふらになって自分の席に戻ると、先斗町のお姐さんが飛んできて
「にごちゃん、すっごく良くなった」
と褒めてくれた。
去年に比べて格段に姿勢と音が良かったんだとか。
弾ける弾けないは関係ないらしい。
出演者全ての稽古が終わって、会が始まるまで休憩になった時、
おっしょさんがアタクシのほうへやってきて
「どう?」
と聞かれた
「ぜんぜん真っ白で判りません。弾けない気がします」
と答えると
「大丈夫。
本番はゆっくり弾くこと、それから順番が来るまで悪あがきしてなさい。
それが効くから」
とアドバイスしてくださると何処ぞへ出掛けてしまった。
1時間ぐらいただひたすらにMDで曲を聴きながら、目で譜面を追う。

お客さんたちも次々とお出でになり、かん様の挨拶で会が始まった。
おっしょさんは緋毛氈の上からアタクシに
「悪あがきしておきなさい」
と目で合図されたので、他のお弟子さんの演奏中も目は譜面を追い続けた。
一人終わり二人終わり、いよいよ・・・。

ご挨拶代わりにお辞儀をして、おっしょさんたちの真ん中へ座る。
三味線をアタクシに渡しつつ
「悪あがきはどうだった」
と微笑みながら尋ねる
「悪あがきでしたけど、よくわかりません」
と半分テンパってて意味不明な答えなのに
「じゃあ、大丈夫ね」
と返ってくる言葉もさらに意味不明。
そして、稽古と同じようによ〜いの掛け声で弾き始めた。
稽古ほどではないにせよ、相変わらず自分の三味の音が聞こえない。
けれど、左から
「4、7、6、2の1」
とおっしょさんが音を誘導してくれる声がはっきりと、
というより、それだけが聞こえてきた。
声を頼りに弾いているも、頭が半分テンパってて半分真っ白なので、
時折その声の意味すら判らなくなる。
それでも頭を動かさず目を動かさずじっと畳を見つめていた。
ら、わからなくなったところで瞑ってしまった・・・。
稽古と五十歩百歩状態で、ようやく最後の部分にさしかかり、
なんとか締めることができた。
正直、心底「終わったあ〜」とほっとした。
お客さんから暖かい拍手を頂いて席に戻ったら、
そこにはアタクシ以上にほっとした顔のたけぞ氏がいた。

気が緩んだこともあって、後半は眠たいのを我慢するので精一杯。
全てが無事に終わって、いよいよ楽しい美味しいお食事会。
宴の最中に、おっしょさんをはじめ、お世話になったおくさん、
鳴り物のお師匠さん、お客さんたちにご挨拶をして回る。
(先斗町のお姐さんからの指示)
奥さんと奥さんのお友達はアタクシのテンパり具合をお見通しで、
「ぼろぼろだったね〜!
でもね、上手くなったから欲や色気が出てきてテンパっちゃうのよ。
それを超えて毎回弾ければプロだから」
と激を飛ばされたような励まされたような。
大概の方々には
「上手になった。よかった」
と褒められた。
が、先斗町のお姐さんとゆ〜こさんの前に来たとき、
皆さんから褒めてもらった嬉しさと、
テンパることを見越せない自分の甘さからきた失敗とが
ごちゃごちゃになって悔しくて、涙腺が緩みそうになった。
くそ意地で緩ませなかったけど。
お姐さんはもう一度
「弾く格好が悪いと音が良くないけど、
にごちゃんは弾く格好がちゃんとしてるから
これからもっと上手になりまっせ」
と褒めてくれた。
ゆ〜こさんも
「よく出来ました!」
と褒めてくれた。


で、一息ついてたけぞ氏からの昨日書いた台詞。
ま、あれで上がってしまったら本人が一番納得できない。

たけぞ氏は聴く耳を持っているので、稽古の時でも曲になってないとか音がちゃんとしてないとかちゃんと感想を言ってくれる。
おっしょさんは、三味線を弾いている姿を見ているだけでも勉強になる上に、
弾き方の技術から理論から長唄を含めた日本の歴史だとか和事の美しさだとか惜しみなく色々教えていただいている。
そんな恵まれた環境にいるんだからもっと精進しないとな。
あんなに悔しい思いはもうしたくないし、
やっぱり演奏して拍手してもらうの気持ちがいい。
なら、出来るだけ上手に演奏したいしな。

以上が今年の上げ浚いだったさ。






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