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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
君の、君の名前、聞いてみてびっくり、さぁ、どうぞ。(おかあさんといっしょ) 「虎!」 人語を操る虎だった。 「いかにも」 稀に、人語を解し操る動物がいる。動物としては長生きをし、何かを得たもの。猫なんかが多いが、虎は初めてだった。と、いうか猫でもなかなかお目にかかれないものである。人間が生きているうちで一度でも会えばいい方だった。 「虎......」 彼女はもう一度つぶやいた。 「そうだと言っている。この場にいる以上、とって食おうとは思わんから心配は無用だ」 「そ、そう。それならいいんだけど」 「ところで、お嬢さん」 「何?」 「何を読んでいるのか、聞いても良いか?」 「いいけど? コレ?」 「そうだ」 「たいした事は書いてないわよ」 彼女が手にしている新聞は、この街の情報も含めた新聞だった。だから、ケーキの特集などと書かれていたのだが。 「それでもかまわない。なんと書かれている?」 「今月、もっともおいしそうなケーキナンバーワンの店は、ファイブウィンのマロンケーキだ。だって」 「ほう、ケーキ。まだ口にした事がない」 「食べた事がないの?」 「何しろ、人語を話し始めたのはつい最近のことだ」 「そう、じゃあ、明日食べに行こうか?」 悪い虎ではなさそうだ、と思い彼女は誘ってみた。 「良いのか?」 「いいわよ。どうせ食べに行こうと思っていたんだし。ところで、アンタ、お金持ってんの?」 「オカネ? ああ、コレのことか?」 虎は自分の前足に巻き付けた巾着袋を彼女の前に差し出した。彼女の手首の倍ほどある前足の巾着を広げる。 「何コレ!」 「何故か、私を前にした人が落として行った物だ」 「ふーん」 虎を前にし恐怖のあまり落として行ったのだろう、と彼女は考える。
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