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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
十二月になってしまった。 彼女は美人だった。だけど彼女にはどうでもいいことだった。その背には黒と黄色と白のまだらな髪の束がある。地毛だった。彼女はそれでよく『虎の毛』と馬鹿にされた。主に近所の男の子に。その男の子らが成長して今度は彼女に言い寄って来た。それも彼女にはどうでもいい。父親の形見の剣を手にして生まれた故郷を飛び出した。そして、何ヶ月かした頃、旅にも慣れて、とある酒場に行き着いた。 彼女がその酒場に入ると、男たちがどよめく。それほど彼女は美人だった。または腰に差してある剣に驚いたのかもしれない。どこか金持ちの国の王様が持っていそうな立派な剣だった。はたまた、彼女の髪に目がいったのかもしれない。そんなまだらな髪はあまりない。今回に限り、そのどれでもなかった。彼女の後に入って来た、それに驚いたようだ。 彼女はそれに気づかなかった。まっすぐカウンターに向かい、何か温かいスープを注文した。そして、空いているテーブルに付いた。途中で買って来た新聞に目を通す。 「お嬢さん、同席よろしいか?」 「どうぞ。ただし、下心なしに限るわ」 相手を見ずに彼女は言った、目は新聞の記事だ。よっぽど気になる事が書いているらしいが、実は『特集! 美味なるケーキ店ベスト10』というものだった。 「心配及ばん。人間の娘は対象外だ」 「そう、じゃあ何? 虎だったらいいの?」 彼女はまだ新聞に目を奪われている。虎と出たのは昔、そう馬鹿にされたからだ。 「まあな」 そう返されて、少しむっとした彼女はやっと相手を見て驚いた。 虎だった。
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