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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
何をやるか決まっていないので、どうしようかと悩む。 「あなたの願いを叶えて差し上げましょう」 街頭でそんな言葉をかけられた。 「はあ?」 スーツをびしっと着た、それなりにいい年齢の男性だった。ルックスもそれなりに良い。 「ああ、なんか昔あったわね。『あなたの幸せを三分祈らせてください』とか」 怪しい新興宗教団体なのかなんなのか? それで自分の利益になるのだろうか? ともかく私は笑って断った。 「いいわよ、いらないわ」 しかし、男性は真剣そうな顔で私を見る。それでも、顔は笑顔だ。 「本当に叶うのですよ」 「いや、いらないから」 「何も代償はいりません」 「いや、いらないから」 「試しに何か言ってください」 「余計怪しい」 「頼みますから」 「じゃあ、あなたが離れてください」 「僕が離れては意味がないんです」 しまいには男性は泣きそうな顔をした。こんな街頭で男の人に泣かれたら私はどんな女だろうと思われるに違いない。 「じゃあ、たい焼き。たい焼きが食べたい」 「たい焼きですか。わかりました。ちょっと待ってください」 男性は近くのビルに入って行った。そして、一分ほどで出てくる。 「はい、たい焼き」 その手には熱々としたたい焼きが紙に包まれていた。 「ほ、ほんとに来た。しかも、早っ!」 試しにビルに入った。いくつかテナントや事務所の入ったビルだが、当然こんなところにたい焼き屋はない。 「ね、願いが叶ったでしょ」 「そうね......」 これは本当かもしれない。が、何かトリックがあるのかもしれない。 「さ、では、あなたの願いを言ってください」 「じゃあさ、剣と魔法の世界へ連れて行って」 うん、これならさすがに出来ないでしょ。 「お安い御用です!」 男性は何故かうれしそうに、そう言った。 私は「しまった!」と思った。そして、普段の空想癖を悔やんだ。この男は、正真正銘、剣と魔法の住人なのだ。そして、なんらかの理由で現実世界に迷い込み、誰かの願いじゃないと帰れないというベタな理由で帰れなかったのだ。 「ここが、剣と魔法の世界でーす。それでは、ありがとう、さよーならー」 「待てや」 私は彼の襟首を掴んだ。スーツ姿だった彼は今やピエロのようなかっこをしている。 「まさか、本当に連れてこられるとは思わなかったわ。アンタ、責任取んなさいよ」 「いや、これ、あなたが望んだことであって、僕の責任では......」 「なんでも願いを叶えるって言ったわね」 「ああ、はあ」 「でも、いくつまでとは言ってなかったわ」 「......と、申しますとあなたにはまだ願いがあると?」 「ええ、たくさんあるわ。ともかく、この世界での生き方を教えて。私が一人で暮らせるようになるまでね」
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