気まぐれ日記
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机の回り中心に片付け物をした。よくもまあ、こんなにガラクタばかり集めたな、と。昔撮ったプリクラとか、キョロちゃんスタンプなどなどがごちゃごちゃ。、あと、おみくじの縁起物とか(福禄寿・大黒天・熊手・銭亀と金に関するものばかりあたる)、全プレで届いたものとか、ポストカードとか……。整理し切れなかった。頭痛くなって……。(逃げた……)
「で、婦長。父が夏目君を連れて行ったんだね」 森が患者のカルテを見ながら、そばにいる婦長と目を合わせずに話しかけた。 「はい」 婦長も、目を合わせずに返事をする。 「ありがとう、婦長。正直に答えてもらえてうれしい」 「私は、副院長の味方ではありませんが、患者の味方ですから」 「厳しいな」 「ええ、副院長のなさることも犯罪に近いですから」 「まーね。それは認めるよ」 「手の早いところは」 婦長がそこで、言葉を切り、森が続ける。 「父にそっくりだろ」 「ええ。副院長、何を考えているんですか?」 「この病院を潰すことだよ」 さすがに、婦長は呆れたような驚いたような顔を森に向けた。森は笑っていなかった。冗談ではないことを彼女に伝わった。 「夏目君、どこの病室にいるの?」 「すいません。そこまでは……」 「いってくれるかい?」 「わかりました。私は、患者の味方ですからね」 「ありがとう。助かる。本当は私が父の援助をすればいいことなんだけどね。そうすれば、夏目君を見捨てることになるだろうから……」 「副院長、あなた……」 それで、罪滅ぼしをするつもりですか? 言葉がでかかったが、森がさえぎった。 「婦長、そうじゃない。私はね、やりたいようにやるだけ。それに、夏目君は死なないよ」 「はあ?」 婦長が不思議そうな顔をする。 「彼には、妖精の女王がついているから」 「……」 「でも、急いで欲しい」 「わかりました」 婦長は診察室を出て行った。そして、院長室に向かう。 院長室をノックして、ややして返事がある。いつものことだと思い、しばらくしてからドアを開ける。 「珍しい。梶元君か? 何のようかな」 「それよりも、院長。いっそ、隣に寝室を作ってはどうですか?」 「息子のヤツにも同じことを言われたよ」 似たもの親子だ、とひそかに呆れる。それを顔には出さないように彼女は笑った。 「それよりも、院長。先日から患者が消えることがありましてね。それも、助かる見込みが無い患者ばかり……。長い間診て来た患者も中にはいましたが……何をしていらっしゃるのですか?」 「君は、参加するつもりがあるのか?」 「できれば」 「まあ、婦長がつけば他の看護師も安心できるだろう。ついてきなさい」 院長が立ち上がり、歩き出す。院長室の奥にエレベータがあった。誰もその造りを知らない。 「これ、隠してあるの、知っていた?」 「いいえ」 「だろうね。息子も知らんだろう。これは実は趣味で作っただけのものだった。だから、こうして、使うとは思っていも見なかった」 「趣味?」 「隠し階段、隠し扉。隠し部屋。小さい頃はあこがれたものだ。それをふと思い出して取り入れた。それだけのことだった」 院長は無邪気に言った。 「実際使うとなると、厳しいものがある」 それは、自分への厳しさなのか、患者への厳しさなのか、婦長にはわからない。でも、何をしているのか予測はできていた。
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