気まぐれ日記
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井上の子供の名前を確認した。いままで出そうにも、出せなかった。もし、このままでやっていたら、仁はともかく成子と間違っていた。正解は、せい子。
セリナと子供たちは電車に乗って動物園へと向かった。ドールが子守をするのは稀だが、無いことは無い。もともとは介護用に開発されたものなので、子守にも適するように作られている。 「仁さん、せい子さん。少し歩きますけど、よろしいですか?」 「もちろん」 「はやく、ぞうさんに会うんだ」 「でも、走らないでくださいね。危ないですから」 動物園は、人はまばらだったが、夏休み中ということもあり家族連れが多い。 動物園の運営費はお金がかかるので経済が崩壊したとき動物園も国からなくなるのではないか、と懸念されたが、どこかのお金持ちが「そんなことで子供たちが動物を知らないのではかわいそうだ」と動物園を買い取り、オーナーとなった。そのおかげで、セリナたちが今いる動物園はたくさんの動物がいる。 入場料金を支払い、三人は中に入った。 「わたし、ぞうさんが見たいの」 「おれは、くま」 二人の要望をセリナは園の案内板を見て位置を確認した。 「そうですね、順番に見ていきましょう。全部の動物さんをみるのだから……」 「でも、さきにぞうさんをみる」 「おれはくまがみたい」 セリナは困った。似たようなことでもめている兄弟らしき子供が父親と母親のペアになり、それぞれ見たいところへと連れて行ってもらっていた。 「……」 仁がセリナを見つめていた。セリナがそれに気づいたときは仁は少し拗ねたような顔をしている。それでも、笑って言った。 「いいよ。せい子、ぞうを見よう」 「うん」 「偉いな、仁さん。象さんを見たらすぐに熊さんのところ行きましょうね」 「セリナ、ごめんね。困らせて」 「いいんです。気にしてません」 一通り見て、売店でジュースを飲んでもう一度見たいところへ向かう。帰ろうかと言い出したときには、日が傾き始めていた。 「今から帰ると、明るいうちに家に着きますね」 「うん」 「セリナ、ありがとう。今日はとっても楽しかった」 「よかったですね」 「でも……」 せい子がそこで言葉を止める。セリナには何が言いたいのかわかった。 「今度は、井上さんと美並さんも一緒に行けたらいいですね」 電車の中で、居眠りしている子供たちに肩を貸してセリナは物思いにふけった。ドールが物思いをすることは無いが、セリナは別である。ひたすら、夏目の無事を祈っていた。
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