気まぐれ日記
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2005年08月20日(土) 仕事の終了

 今日,最後の日となりました。長い間勤めていたのですが、一滴の涙もありませんでした。しめっぽいのが苦手というのもあるんですが、寂しさはありません。ああ、これはやっぱり私の意志だったんだと自覚。あとは、三十一日に挨拶に行くのだ。さて、何を持っていけばいいのか……。


 その日の夏目は暇だった。昨日はたっぷりと眠ったため、眠くない。そのためロビーのソファーに座り、ずうっとテレビを見ていた。見ていたというより上の空で、目に入ってくる映像は頭まで届かず途中で遮断されている。耳から入る音も同じだった。彼は普段からテレビは見ていない。最近熱心に注意を向けるのは料理番組である。
 『ニュースです』
 男性キャスターが静かに言った。夏目はふと我に返った。連日の暑さで日射病・熱中症の患者が急増していることを伝えている。なんだ、と思い彼はまた、ぼうっとしそうになった。横を見ると、本がある。日焼けして色が変わっているが、きれいにしている。
 「へえ、本があったんだ」
 本は嗜好品である。紙は贅沢品。だから、こういう公共の場では置かない。だが、読んでくださいといわんばかりにそれは置かれていた。推理小説らしいその本を手にとって、ソファーに戻った。
 一日は、それで終わった。小説は思ったよりも重く難解でなかなかページが進まない。それでも、テレビをぼうっと眺めているよりは時間をつぶすことができた。
 「セリナ、どうしているかな……」 


草うららか |MAIL

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