気まぐれ日記
DiaryINDEX|past|will
長らくご愛読ありがとうございました。これで、自分勝手きままに書いたSaGaを終わらせることができました。 明日は、懺悔します……。
楽園
「なんなの、あなたたちは?」 あまりににぎやかな四人にシルアが問う。 「ああ、お姉さん久しぶり」 少年が答える。 「あなたは、あの時の?」 「うん、僕たちは神の分身、といった方がいいかな」 「本体がああなってしまってね」 と、フードをかぶった男。 「まだ、戦わなければならないの?」 タジュトが見上げて、女性を見る。彼女に助言した神だった。 「いいえ、私たちは本来見ているしかできない存在。それよりも……タジュト、あなたが拾った小瓶は持っているかしら?」 「えっ……」 「そうそう、早くしねえと腐っちまうからな」 と、ティターンの姿の神は言う。 タジュトはポケットから小瓶を取り出した。雲の小世界で拾い、何に使うかわからず、きらきらしているからきれいだといって拾ったものである。 「やはり、あなたが持っていたのね、それ」 「すげえ、ラッキーじゃん」 「それよりも早く説明したれ、それの使い方」 「そうね、それは『生き返り』といって、死んだ者を呼び覚ます、神のための薬。本来、神が手放すことはないはずなのだけど……。それを手にしたのだからそれはあなたのチャンス」 「いいの、これ、使って」 「もちろん。それはもう、あなたのだから」 「お兄ちゃん、ゾンビになんない?」 「なんない、なんない」 「じゃあ……」 タジュトが瓶のふたを開ける。きらきらと光るものがダノに吸い込まれていく。 しばらくして、ダノは目覚めた。その瞬間タジュトに抱きつかれる。 「く、苦しい!」 「おにいちゃーん!」 「た、た、たじゅ?」 「もう、ばかばかばかばかばかばかばか! もう、死んだら絶対許さないんだから!」 「へ、死んだ?」 「そうよ、あたしが拾い物してなかったらお兄ちゃん、あの世行きだったんだからね!」 「そっか、そうだったのか」 「よかったわね、タジュトさん」 「うぉーん! 兄貴ぃ!」 ダノは起き上がって、皆の顔を見た。それで、把握する。もう、あの神を名乗る男がいない、と。 「お取り込み中、失礼」 フードをかぶった男が声を掛けた。 「ちゃんと、説明したいから聞いてくれるかしら」 と、女性。 「説明?」 「ええ、なんでこんなことになったかってね」 「それ、聞きたい」 「そうだな」
神は彼らに助言をするために、四人の分身を作った。しかし、その四人、それぞれに性格をつけたのだが、神本体に残ったのは……。 「悪い性格しか残らんかったわけだ」 「そして、僕たちは押し閉じ込められて」 「シナリオは悪い方へ悪い方へと進んでいったの」 「君たち、いや、この塔に住まうもの皆には、本当に申し訳ない」 「本来なら、私たちは傍観するしかできない存在。結局本体が望むように、あなたたちに賭けるしかなかった」 「神を倒す者たちをね」 「できうるかぎり元に戻して、この塔を消して世界を一つにしようと思う」 「でも、君たちご褒美あげちゃおうとおもうんだ」 「楽園をね。だって、そのために塔を上ってきたんだろ」 「あの扉の奥を開けてくれ」 ダノはゆっくりと立ち上がった。 「そういうなら、せっかくだから楽園を拝むか」 「お兄ちゃん?」 ゆっくりと扉の前にたち、ノブに手をかける。しかし、動きはそこで止まった。 「やっぱ、やめだ。見て出られなくなったら終わりだもんな」 ダノは、後ろを振り向いた。四人の神たちは狂喜して手をたたいた。 「さっすが!」 「すばらしいわ」 「実はそっち行ってもねえんだな」 「そこは、私たちのプライベートルーム。生活空間ですからね。本体が作った塔の模型があるだけなんですけど」 「じゃあ、君たちを送ってあげるよ。場所は旧一階でいいね」 彼らは一瞬闇に包まれ、落下した。
一階、その雰囲気はがらりと変わっている。ただ、シンボルのように建っていた塔は消えていた。 「ねえ、なんで楽園を見ようとしなかったの?」 タジュトは新たな旅支度をしていた。一階に戻って数日後のことである。 「ああ、だってよ、世界を一つにするって言っていたんだぜ。そのほうが楽しいじゃねえか」 「それだけ?」 「……それに、な。あの資料室でわかったんだが……。父さんと母さんは生きている」 「……なに、それ?」 「お前には、事故で死んだって言ったよな。でも、本当は塔に入ったんだ。でも、帰ってこないし塔も封印された。だから、死んだことにしていればお前も諦めつくんじゃないかと思った。結局、俺が諦められなかったけどな」 「だから、お兄ちゃん。塔に?」 「資料室で、父さんの名前も母さんの名前もなかった。世界が一つになった今、どこかにいるはずだ」 「さがそ」 「ああ」 家を出ると、オードとシルアがいる。そして、さやかも。 「ダノさん、おはようございまーす。バイクのメンテばっちりです! もう乗っちゃってください!」 「ありがと、さやかちゃん」 「当たり前ですよー。ダノさんたちは英雄ですから。お手伝いできて幸せです」 「シルア、君の両親は?」 「ええ、元気にしているからまた旅にでちゃった」 「そして、オード……」 「俺はもともと兄貴に尽くすつもりだからな。一生ついていきやすぜ」 「……メンバーがそろったことだし、いくか」 「うん」 バイクに乗り、エンジンをかける。 「そういえば、雲の上のグライダー。あれも便利だよな」 「そうだな、今度ミレイユにあったら借りるか」 「じゃあ、とりあえず行き先決定! しゅっぱーつ!」 バイクが砂煙をあげて走る。それをさやかがいつまでも見送っていた。
終わり
|