気まぐれ日記
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2005年07月31日(日) ついに完結!  

 長らくご愛読ありがとうございました。これで、自分勝手きままに書いたSaGaを終わらせることができました。
 明日は、懺悔します……。


  楽園

 「なんなの、あなたたちは?」
 あまりににぎやかな四人にシルアが問う。
 「ああ、お姉さん久しぶり」
 少年が答える。
 「あなたは、あの時の?」
 「うん、僕たちは神の分身、といった方がいいかな」
 「本体がああなってしまってね」
 と、フードをかぶった男。
 「まだ、戦わなければならないの?」
 タジュトが見上げて、女性を見る。彼女に助言した神だった。
 「いいえ、私たちは本来見ているしかできない存在。それよりも……タジュト、あなたが拾った小瓶は持っているかしら?」
 「えっ……」
 「そうそう、早くしねえと腐っちまうからな」
 と、ティターンの姿の神は言う。
 タジュトはポケットから小瓶を取り出した。雲の小世界で拾い、何に使うかわからず、きらきらしているからきれいだといって拾ったものである。
 「やはり、あなたが持っていたのね、それ」
 「すげえ、ラッキーじゃん」
 「それよりも早く説明したれ、それの使い方」
 「そうね、それは『生き返り』といって、死んだ者を呼び覚ます、神のための薬。本来、神が手放すことはないはずなのだけど……。それを手にしたのだからそれはあなたのチャンス」
 「いいの、これ、使って」
 「もちろん。それはもう、あなたのだから」
 「お兄ちゃん、ゾンビになんない?」
 「なんない、なんない」
 「じゃあ……」
 タジュトが瓶のふたを開ける。きらきらと光るものがダノに吸い込まれていく。
 
 しばらくして、ダノは目覚めた。その瞬間タジュトに抱きつかれる。
 「く、苦しい!」
 「おにいちゃーん!」
 「た、た、たじゅ?」
 「もう、ばかばかばかばかばかばかばか! もう、死んだら絶対許さないんだから!」
 「へ、死んだ?」
 「そうよ、あたしが拾い物してなかったらお兄ちゃん、あの世行きだったんだからね!」
 「そっか、そうだったのか」
 「よかったわね、タジュトさん」
 「うぉーん! 兄貴ぃ!」
 ダノは起き上がって、皆の顔を見た。それで、把握する。もう、あの神を名乗る男がいない、と。
 「お取り込み中、失礼」
 フードをかぶった男が声を掛けた。
 「ちゃんと、説明したいから聞いてくれるかしら」
 と、女性。
 「説明?」
 「ええ、なんでこんなことになったかってね」
 「それ、聞きたい」
 「そうだな」

 神は彼らに助言をするために、四人の分身を作った。しかし、その四人、それぞれに性格をつけたのだが、神本体に残ったのは……。
 「悪い性格しか残らんかったわけだ」
 「そして、僕たちは押し閉じ込められて」
 「シナリオは悪い方へ悪い方へと進んでいったの」
 「君たち、いや、この塔に住まうもの皆には、本当に申し訳ない」
 「本来なら、私たちは傍観するしかできない存在。結局本体が望むように、あなたたちに賭けるしかなかった」
 「神を倒す者たちをね」
 「できうるかぎり元に戻して、この塔を消して世界を一つにしようと思う」
 「でも、君たちご褒美あげちゃおうとおもうんだ」
 「楽園をね。だって、そのために塔を上ってきたんだろ」
 「あの扉の奥を開けてくれ」
 ダノはゆっくりと立ち上がった。
 「そういうなら、せっかくだから楽園を拝むか」
 「お兄ちゃん?」
 ゆっくりと扉の前にたち、ノブに手をかける。しかし、動きはそこで止まった。
 「やっぱ、やめだ。見て出られなくなったら終わりだもんな」
 ダノは、後ろを振り向いた。四人の神たちは狂喜して手をたたいた。
 「さっすが!」
 「すばらしいわ」
 「実はそっち行ってもねえんだな」
 「そこは、私たちのプライベートルーム。生活空間ですからね。本体が作った塔の模型があるだけなんですけど」
 「じゃあ、君たちを送ってあげるよ。場所は旧一階でいいね」
 彼らは一瞬闇に包まれ、落下した。

 一階、その雰囲気はがらりと変わっている。ただ、シンボルのように建っていた塔は消えていた。
 「ねえ、なんで楽園を見ようとしなかったの?」
 タジュトは新たな旅支度をしていた。一階に戻って数日後のことである。
 「ああ、だってよ、世界を一つにするって言っていたんだぜ。そのほうが楽しいじゃねえか」
 「それだけ?」
 「……それに、な。あの資料室でわかったんだが……。父さんと母さんは生きている」
 「……なに、それ?」
 「お前には、事故で死んだって言ったよな。でも、本当は塔に入ったんだ。でも、帰ってこないし塔も封印された。だから、死んだことにしていればお前も諦めつくんじゃないかと思った。結局、俺が諦められなかったけどな」
 「だから、お兄ちゃん。塔に?」
 「資料室で、父さんの名前も母さんの名前もなかった。世界が一つになった今、どこかにいるはずだ」
 「さがそ」
 「ああ」
 家を出ると、オードとシルアがいる。そして、さやかも。
 「ダノさん、おはようございまーす。バイクのメンテばっちりです! もう乗っちゃってください!」
 「ありがと、さやかちゃん」
 「当たり前ですよー。ダノさんたちは英雄ですから。お手伝いできて幸せです」
 「シルア、君の両親は?」
 「ええ、元気にしているからまた旅にでちゃった」
 「そして、オード……」
 「俺はもともと兄貴に尽くすつもりだからな。一生ついていきやすぜ」
 「……メンバーがそろったことだし、いくか」
 「うん」
 バイクに乗り、エンジンをかける。
 「そういえば、雲の上のグライダー。あれも便利だよな」
 「そうだな、今度ミレイユにあったら借りるか」
 「じゃあ、とりあえず行き先決定! しゅっぱーつ!」
 バイクが砂煙をあげて走る。それをさやかがいつまでも見送っていた。


                          終わり 


草うららか |MAIL

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