気まぐれ日記
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2005年07月21日(木) 夏のミステリー

 職場のパソコンに入っていた、六月の検食日誌が消えました。どこのパソコンにもないらしく、誰が消したかも謎。どこかのファイルにまぎれていると信じたい。


  塔  二十一階

 そこは一面の花畑だった。小世界というにふさわしい、小さな花の世界。その世界に小さな家があった。
 「ごめんください」
 シルアがそのひっそりと建っている家をのぞいた。小さな家に、小さなテーブル、椅子、そしてベッド。ベッドには老人が寝ていた。
 「お前さんたちは……もしかして、塔からきなすったのか?」
 「ええ、そうです」
 「こんにちは」
 タジュトも一緒に入り、オード、ダノと続く。
 「よう来たよう来た。ずっと、お前さんたちを待っておった」
 「待っていた?」
 「ああ、五十年前、神がこの地に現れて塔から来たものに託せと言われてのう。ようやく、わしは肩の荷がおりる」
 「おい、じいさん?」
 ダノの手を掴み、念じるように目をつぶった。光が手を包み、その光が消えるとダノの手には、剣がおさまっていた。
 「これは……」
 「エクスカリバーだ。これで、わしも安心して死ねる。じゃね、魔界塔士」
 「え、じいさん。ちょっと……」
 老人の姿が揺れ、空気に溶けるように消えていく。
 「もう、とっくに亡くなっていたのね」
 ベッドの下から、骨が見つかる。ダノたちはそれをシーツでくるんで、家の近くに埋め、墓を作った。
 「ありがと、な。じいさん」
 
 その世界から出て、二十二階を目指す。ウォッチャーと呼ばれる目玉の魔物、幽霊系のレイスが現れる。ダノは早速、エクスカリバーを振るった。
 「あ、え、軽い!」
 数体かたまっていたウォッチャーにまとめてダメージを与える。魔物も驚いたらしく、すごすごと逃げ腰になっていた。
 「すっげー……」
 「兄貴、すげえ! さすが!」
 剣を手にしているダノ自身が驚いている。
 「まさに、神が与えたもう力」
 「いいなあ、そんなの欲しい」
 「タジュトには、無理だ。剣自体は重い」
 「むう」
 タジュトはちょっとむくれたが、その剣を持つ兄に見とれた。
 「あと、二階。この塔の最上階は二十三階よ」
 シルアは、暗い声で言う。
 「いよいよ、アシュラのお出ましか」
 「気合入れていくぜ」
 「もう、けちょんけちょんにしてやるんだから」
 「皆、気をつけて」
 二十二階へ、そして二十三階への階段を一行はのぼり始めた。


草うららか |MAIL

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