気まぐれ日記
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職場のパソコンに入っていた、六月の検食日誌が消えました。どこのパソコンにもないらしく、誰が消したかも謎。どこかのファイルにまぎれていると信じたい。
塔 二十一階
そこは一面の花畑だった。小世界というにふさわしい、小さな花の世界。その世界に小さな家があった。 「ごめんください」 シルアがそのひっそりと建っている家をのぞいた。小さな家に、小さなテーブル、椅子、そしてベッド。ベッドには老人が寝ていた。 「お前さんたちは……もしかして、塔からきなすったのか?」 「ええ、そうです」 「こんにちは」 タジュトも一緒に入り、オード、ダノと続く。 「よう来たよう来た。ずっと、お前さんたちを待っておった」 「待っていた?」 「ああ、五十年前、神がこの地に現れて塔から来たものに託せと言われてのう。ようやく、わしは肩の荷がおりる」 「おい、じいさん?」 ダノの手を掴み、念じるように目をつぶった。光が手を包み、その光が消えるとダノの手には、剣がおさまっていた。 「これは……」 「エクスカリバーだ。これで、わしも安心して死ねる。じゃね、魔界塔士」 「え、じいさん。ちょっと……」 老人の姿が揺れ、空気に溶けるように消えていく。 「もう、とっくに亡くなっていたのね」 ベッドの下から、骨が見つかる。ダノたちはそれをシーツでくるんで、家の近くに埋め、墓を作った。 「ありがと、な。じいさん」 その世界から出て、二十二階を目指す。ウォッチャーと呼ばれる目玉の魔物、幽霊系のレイスが現れる。ダノは早速、エクスカリバーを振るった。 「あ、え、軽い!」 数体かたまっていたウォッチャーにまとめてダメージを与える。魔物も驚いたらしく、すごすごと逃げ腰になっていた。 「すっげー……」 「兄貴、すげえ! さすが!」 剣を手にしているダノ自身が驚いている。 「まさに、神が与えたもう力」 「いいなあ、そんなの欲しい」 「タジュトには、無理だ。剣自体は重い」 「むう」 タジュトはちょっとむくれたが、その剣を持つ兄に見とれた。 「あと、二階。この塔の最上階は二十三階よ」 シルアは、暗い声で言う。 「いよいよ、アシュラのお出ましか」 「気合入れていくぜ」 「もう、けちょんけちょんにしてやるんだから」 「皆、気をつけて」 二十二階へ、そして二十三階への階段を一行はのぼり始めた。
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