気まぐれ日記
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しんどいものは、しんどいんです。(仕事が)
俺は借りた本を返しに行こうと夏目の部屋を尋ねた。チャイムを鳴らすとセリナちゃんが出てくる。 「あら、梶元さん」 「おう、セリナちゃん。夏目いる?」 「ええ、います。どうぞあがってください」 が、夏目はいなかった。いたのはぎょっとした表情の女性だった。これがまた美人で、うら若い女性だった。 「セリナ、ちょっと……」 「はい?」 「いや、いい。自分で何とか説明する。飲み物でも用意して」 「はい」 と、言うような筒抜けの内緒話をしてセリナちゃんはキッチンにひっこんだ。 そして、うら若い女性が俺の目の前に座った。 「初めまして、俺……」 「梶原さん」 名前を呼ばれて、どきっとした。やや暗めの落ち着いた声だ。でも、表情は引きつっている。 「はい?」 「俺、こんななりをしてますけど、正真正銘、夏目です」 「……冗談を」 「冗談でなく、本当です」 「……」 「信じがたいと思いますけど、本当です」 「なんで、そんな姿に……」 俺は、夏目の話を聞いた。信じがたいことばかりでめまいを感じた。この人が、今までにどんな生活をしてきたのか嫌でもわかる。話が終わると、セリナちゃんが飲み物を持ってきた。アイスコーヒーだ。 「ありがと、セリナ。まだお菓子があったかな」 「はい」 アイスコーヒーが置かれた。 「先にどうぞ」 また、間違って置かれているかもしれない。 「セリナは二回は間違えるから」 一口。大丈夫だった。 「最近は落ち着いてたけど、久しぶりでね……」 夏目はため息をついた。 「たいへんです」 「どうしたの、セリナ?」 「お菓子、カビてました」 「捨てて……もったいないことしたなあ」
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