気まぐれ日記
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美容室へ行ったら、六時まで手があかないと言われた。仕方がないから出直すことにした。
「お前、こんなの飲んで胃、大丈夫か?」 梶元は、やや呆れた表情で聞いた。彼は笑って大丈夫だと答える。 「しかし、まさかドールがいるなんて……。で、あんたは? 夏目の友達にしちゃあ老けてるな」 井上の方を見て、梶元はきいた。 「ドール開発者の井上さんだよ」 「へえ、ドール開発者ねえ……だから金持ってんだ」 井上は、礼儀がなってない梶元を軽くにらむが、若いのもあると諦めた。その代わり、関わらないことに決めた。 「セリナ、この人は、前のバイト先で世話になった人なんだ。口は悪いけれど、親切な人なんだ」 「名前は、梶元さん、ですね」 ドールに名前を呼ばれて、梶元はびくっとする。ドールに名前を呼ばれたことはもちろんない。 「よ、よろしく、セリナちゃん」 「で、井上さんはこのセリナを作った開発者なんだ」 「どうも、老けた友人ですいませんね」 井上は、すでに気を悪くしているので、そんな挨拶しかしない。 四人は雑談をしていた。 本を読んだことがないという梶元に夏目は自分の部屋に案内する。案内と入っても居間とドア一枚でつながっている部屋だが。そこには彼の祖父が残した本が並んでいた。 「俺、本がこんなに並んでいるのはじめてみたよ」 本……今は、数が少なく、本当に物好きにしか売れないものだった。かつて、世の中の出来事が紙に印刷されて毎朝届けられていたことは夏目には信じられない。実際昔の新聞を見たことがあるが、それは子供の時で漢字が読めず何が書いているのかわからなかったのを覚えている。 文字や映像で見たいものはすべて各家庭のパソコンに届けられる。ニュースはテレビで見れる。紙を作るよりも安上がりで便利になり、当たり前になってしまった。
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