気まぐれ日記
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この世の中の基本設定なんですが、とにかく最低限の生活ができる世の中っていうのです。だから、コーヒーは嗜好品なんで一日一杯とか……。(夏目は限度超えているから自分で購入)でも、あんまり制限すると面倒臭くなるし、コンビニで菓子すら買えない世の中ではなさそうだし。その辺は、適当にやるのであまり深く考えないでください。(逃避)
「このカレンダーの丸印はなんですか?」 朝食の片付けが済んだセリナが、ふとカレンダーを見て聞いた。数字しか書いていないきわめてシンプルなカレンダーに何日か丸印が書かれている。 「ああ、それは。赤い丸は編集部の人が来る日だよ。セリナはまだあったことなかったね」 「じゃあ、黒の丸は……」 「ああ、通院日だよ。一応ね」 「トーマ様、今日はじゃあ、通院日なんですね」 「そうだけど。今日は井上さんも来るし行かない」 「だめです。トーマ様、また発作が起きたら苦しいですよね、ちゃんと病院行かないとだめです」 夏目は困ったような顔をした。 「私はトーマ様の苦しむ姿は見たくないです。ちゃんと行ってください。留守番ならできますから」 セリナは、強く言った。普通ドールがこのように主に意見を述べることはない。 「……わかったよ。じゃあ、井上さんには普通のコーヒーを出してやってくれ」 「はい」 夏目の表情はどこか晴れず、しぶしぶと靴を履いた。 「じゃあ、頼んだよセリナ」 「はい、行ってらっしゃいませ」 病院に着き、受付に診察券を出す。夏目を見て事務員が少し驚いた顔をしたが彼は気にしなかった。 「今日は、定期ですね」 「はい」 彼はいつものように診察室に向かった。「遺伝子科」の前でノックする。 「失礼します」 返事を待たずに彼は入っていった。 「おや、珍しい。定期にちゃんとくるなんて」 森は笑顔で迎えた。 「今日はせがまれたんで」 森が椅子に座るように手で示す。彼はそこに座った。 「へえ、誰に?」 少し意外そうに聞いた。夏目は淡々と答える。 「同居人に」 「彼女でもできたのかい?」 「まさか、そんなんじゃないです」 「そうだよね。最近の調子は?」 「悪くないですけど、良くもならない、です」 「いつもとかわりない、か。薬は足りているかい?」 特にメモなどをすることなく、森はただいつものように質問した。 「そろそろなくなります」 「じゃあ、出しておくよ。ところで、貴方に話があるんだが、今度私の家に来てもらえるかな」 急な質問に夏目が少し黙ってから答える。 「……バイトがなければ」 「じゃあ、休みの日をここに記入して」 小さなメモ用紙と筆記用具を渡されると彼はそれに記入する。 「それと、バイトもほどほどにね。あまり強いからだじゃないんだから」 「はい……」
それから、彼は病院を出た。まっすぐ家に帰ると井上はもう来ていた。 「やあ……あまり元気じゃないみたいだね」 「井上さん……」 「お帰りなさい、トーマ様」 「ただいま、セリナ」 夏目はぐったりとソファーにもたれかかった。ちょっと具合が悪い、それくらいだった。 「トーマ様!」 「夏目さん?」 「……大丈夫、少し休めばよくなるから」 「顔色が悪いよ。病院で風邪でももらってきたのかい?」 そうだった。当の本人は気づかなかったが実際体温計で計ると高い熱があった。 「何か薬はあるかい?」 「だめ、俺、他の薬は飲めないから」 「飲めない?」 「今飲んでる薬、強くて。他の薬を飲むには医者に相談しないと」 「じゃあ、こうゆう時は、おかゆに栄養あるもの。セリナ、いい機会だから覚えようね」 井上は台所へ向かっていった。セリナは井上の後を追う。 「はい。トーマ様は寝てください」 「すいません、井上さん」 「それより、貴方のお姉さん、呼んだほうがいいかな?」 「……いいえ、姉さんも忙しいだろうから」 「そうか、じゃあ今日はおかゆを作ったら帰りますね」 「ありがとうございます」 「何、いつも惜しみなくコーヒー出してくれるお礼だよ。珍しいよ、いまどきお茶やコーヒーを出してくれるのは」 「母の教えです。これが礼儀だからって」 「へえ、さあ、貴方は横になってなさい」 しばらくして、足の踏み場のある夏目の部屋におかゆをおいて井上は言った。 「そうだ、今度僕のうちに遊びにおいで。妻と子供を紹介するよ」 「いいの?」 「もちろん。セリナも一緒にね」
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