| 2004年12月22日(水) |
夜風が目に沁みる A Certain Day Of Winter |
口調がはっきりとしておらず、マイクも使っていないためか、教授の声ははっきりと聞こえない。何を言っているのか。興味がないから耳の穴をかっぽじることはしない。実際は耳の穴に何も詰まっていないので興味があったとしてもかっぽじることはしない。その声は子守り唄の効果もあるようだ。瞼が重い。とろけそうに眠い。何がとろけそうなのか。頭がか。それともあらゆる記憶がか。ふと、これからの大学から自宅までの家路を思い鬱陶しくなる。そして自室にてふとんに篭もり、森博嗣の本を読む自分を頭に浮かべ、うっとりする。あの感覚。幸せであった気がする。それにしても寒い。温かさが懐かしい。母胎が。そのイメージが僕を包み込む。あの中にいる限り、僕に責任はない。そう、責任はない。今はある。誰にそんなものを押し付けられているのか。なんでそれを抱え込んでいるのか。それが生きている証か。地球上に自分が一人きりになるまでの証か。では、母胎に包まれた僕は生きていないのか。きっとそうだろう。たまたまあの中から這い出てきて、色んなものを押しつけられ、僕は今、何を言っているのかわからない教授の話を子守り唄にしながらうとうととしている。お、授業が終わったようだ。いつも授業が終わった瞬間に意識がはっきりとする。如何に授業に興味がないか。体は自動的に講義室の扉を通り、やがて建物の外へと運ばれていく。夜風が。気持ちいい。それは一瞬のことで。気持ちいいと感じた瞬間そこに立ち止まりたかったけれど、後ろから僕の方へやって来る人の邪魔になるからそうはできないと判断し歩調はそのままに。何に動かされているのか。何だっていい。そう悪くはない。自分一人が自分を動かす運転手ではない。いくつもの運転手が交代で僕を。それらの運転手は、いつのまにか僕の中にいる。夜風が目に沁みる
―END―
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