夢の世界ではいつも非現実的なことが起こる。 それが何を示すのか? 現実とどう関わっているのか?
夢の中で私は自由に空を飛べる。 それが至って非現実なことであるのは知ってるわ。 遥か地上を眺めると、私を躍起になって探す暗殺の名手が見える。 これは、夢から醒めると私の身に危険が忍び寄って来ることを暗示しているのだと思う。 どうやらその暗殺者は私のように空を飛ぶことはできないみたい。 都合のいい設定でしょ? だってここは夢の世界なんですもの。 だからこの夢の中では、彼に捕まることはないでしょう。 雲の上に身を隠していれば、誰にも見つかることはないでしょ? それに雲の上って素適よ。 そこにいると、ふわふわとした気持ち良さがずっと続くような気がして、これが永遠の幸せなのかなって私思うの。 だから、地上を徘徊している暗殺者のこともあって、私夢から醒めたいなんてちっとも思わない。 これって、何だか現実で言うところの麻薬中毒のような状態に似ている気がするわ。 でも私は現実でもこの夢の中でも麻薬なんて手を出したことないわ、誓って。
このところ幾年も夢から醒めない少女、幸代の両親は、両親が交通事故で亡くなった頃から眠りについた。 彼女の親戚連中は、皆不況ということもあってか毎日の生活にゆとりがなく、彼女が長い眠りから目覚めたら引き取ることになるのを嫌がり、存在を疎ましく思っていたという。 幸代はこのことを知ってか知らずか、目覚めることを遠慮し、夢の中で楽しく暮らしているらしい。 いつも、彼女の寝顔は笑顔に満ちていた。
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ついしん 以前、いくつかタイトルだけを示し、それら(その中に「幸福の夢」というものもあった)のタイトルから連想する短編を書きたいと言っていたが、ようやく短編というよりもショートショートの「幸福の夢」、出来上がりました。
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